インフルエンザ抗原の迅速検査

最近のようにインフルエンザの流行期には、発熱の患者さんが受診した場合には、問診と診察によって、明らかな濃厚接触者でなければ、多くはインフルエンザ抗原迅速検査を行うことになります。

(家族内にインフルエンザの方がいるなどの濃厚接触者の場合には診察のみでもインフルエンザと診断します。)

インフルエンザの治療は発症48時間以内が有効とされているだけに、それこそ「迅速」に検査可能になったのは画期的でした。検査結果は治療方針に直結しますから、最近は外来で最も多く行なっている検査のうちのひとつです。

しかし、非常に有用な検査ですが、多くの方がすでにご存知のように、この検査はインフルエンザウイルスに感染していたとしても、発症直後では陽性にならないという欠点があります。

ウイルス量が少ないと偽陰性になってしまう。つまり、十分な時間が経過していなければ、検査が無駄になってしまうことがあります。

ほとんどの迅速検査は「インフルエンザ簡易検査キット」と呼ばれるもので、発症後12時間以上経過していなければ信頼できないことになっているからです。

まれに発症後6時間以内の方でも陽性になる方もいますが、感度・特異度とも低くなります。

下のグラフはラジオNIKKEI「感染症TODAY」の「インフルエンザの迅速診断」に掲載されているものです。(詳しくはこちら

この「タイミング」のおかげで、実は残念な場面を時々経験することがあります。

「検査では陰性でしたが、タイミングが早かったかも知れません。心配でしたら、発熱が続けば明日また来てください。」というものです。つまり、再受診の提案です。

発熱や全身倦怠感が強い状況では、ゆっくり家で休んでもらった方が良いはずです。インフルエンザなのかそうでないのかを確認するために、わざわざ連日の受診を促すようなことを不本意ながらやらざるを得ませんでした。

というのも、ひとつの理由として、インフルエンザと診断されたら、学生なら自宅療養が学校保健安全法で定められていますし、社会人でもそれに準じて自宅療養を義務付けられているところが多いからです。

「学校に行ってもいいのか」「仕事を休まないといけないのか」というのは切実な問題です。

それで、「明日来てください」を言わなくても済むように、クリニックではウイルス量が少ない2~6時間の初期の段階でも検出が可能な検査機器を導入しました。

(富士ドライケム IMMUNO AG1)

 

発症して12時間経過した方は今までの簡易検査キットを使用し、6時間未満の方にはこの機器を使用しています。

つまり、「念のための再受診」が不要になるという大きなメリットがあります。

ただ、これはインフルエンザの早期発見のために使用するもので、全員が適応というわけではありません。この検査を希望しても医師の判断で行わない場合もありますので、ご了承ください。

 

 

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