年末から胃腸炎が流行しています。
胃腸炎で特に注意しなければならないのは脱水症です。下痢や嘔吐で水分を喪失してしまううえに、悪心・嘔吐が強い場合は飲水ができずに体内の水分が不足してしまうことになります。
発熱があれば、不感蒸泄でさらに水分を喪失してしまいますね。
アメリカの医学雑誌にこんなタイトルの研究成果が発表されていました。
「小児における軽度の胃腸炎に対する希釈したリンゴジュースと電解質調整経口補液(飲料水)の効果の比較」
JAMA. doi:10.1001/jama.2016.5352.Published online April 30, 2016.
巷には脱水を是正する目的の経口補水液が流通しています。不足しがちな電解質を補うように成分が調整されていて、外来でも患者さんにおすすめしている製品です。
ただし、(特に子どもなど)味が苦手な人が少なくないかも知れません。
成人は「治療のために薬と思って飲んでいる」のでしょうが、子どもや高齢者は普段飲んだことのないものを、調子が悪いから飲むようにしようと言っても、うまくいかないことが多いものです。
ここでは、薄めたリンゴジュースが、経口補水液と比較してどうかという目的で研究がなされました。
場所はカナダのオンタリオ・トロント。
6ヶ月から5歳までの軽度の脱水を伴う胃腸炎を患った小児を対象にしています。
薄めたリンゴジュースが323人。リンゴ風味の電解質経口補水液が324人。
補水がうまくいかず、点滴による脱水補正や入院、予定外受診、症状遷延、3%以上の体重減少などの重症脱水が7日以内にみられれば治療失敗としました。
結果は、リンゴジュースの方が治療失敗が少なかったそうです。(16.7% vs 25.0%)
点滴による補液もリンゴジュースの方が少ないという結果でした。(2.5% vs 9.0%)
ただし、入院率や下痢や嘔吐頻度は2つのグループ間で差を認めませんでした。
この論文は、「小児の胃腸炎の軽度の脱水補正には希釈したリンゴジュースが経口補水液に比べて治療失敗が少ない」という結果を示してくれました。
個人的な感想ですが、幼い頃におばあがりんごをすりおろしてりんご汁を作ってくれたのを思い出していました。
今から考えても、脱水を補正するスペシャルドリンクだったと思います。