「浦添市医師会報」2016.春夏号に寄稿しました

浦添市医師会は、年3回の会報を発行しています。

今年は「テーマは何でも良いから」ということで、3回分の寄稿依頼を受けました。

「私みたいなのが…」と思う気持ちを振り切って、快くお引き受けすることにしました。

今度、その2回目の2016年春夏号が発行され、クリニックに一部郵送されて手元に届きました。

2016-06-03 22.22.47

今回は私が寄稿した文章を転載いたします。

もちろんネタは、ワンパターンで(笑)「ウルトラマン」ネタです。

 

 

(ここから)

前回は、金城哲夫の異色作、ウルトラセブン第42話「ノンマルトの使者」のお話をさせていただきました。先にお断りしておきますが、今回もウルトラシリーズです。すみません。私の趣味によろしくおつきあいください(笑)。

 

金城哲夫が円谷プロを退社した後、上原正三も「金城を手伝うためにここにいたのだ。彼がいなくなると、ここにいる理由もなくなる」と言って辞めてしまいました。しかし、フリーになった後でも、上原は円谷一社長に請われて「帰ってきたウルトラマン」のメインライターを務めることになります。未来感あふれる初代ウルトラマンの空気感から、「帰ってきたウルトラマン」は工場の煙突や日本家屋が立ち並ぶ当時の現実社会、現実の生活に近い空気感を舞台設定にしていました。ちょうど高度成長を続けてきた日本に、公害などの社会問題が表面化してきた時代でもありました。

この空気感の違いはなんだったのでしょうか?そのまま金城哲夫と上原正三がヤマトの地に立つウチナーンチュとしての生き方の違いでもあったようです。

「僕は沖縄と日本の架け橋になる」が金城の口癖だったと言います。一方で上原は「ウチナーンチュを標榜してこのヤマトで生きる」がテーマでした。

例えば、金城哲夫の「ノンマルトの使者」で地球人と先住民の間で苦悩するのは、地球人でないどこにも属さないモロボシ・ダンです。中立であり博愛主義者であるウルトラセブンを苦悩させることで、視聴者の心に潜む差別意識を問題提議しました。

上原正三にも同じテーマの作品は数多く存在します。ウルトラセブンのために書かれた「300年間の復讐」は、映像化されなかった作品ですがファンの間では有名なシナリオです。以下にあらすじを紹介しましょう。

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ロッククライミングの特別訓練の最中、ウルトラ警備隊のアンヌ隊員は天候不良でひとりはぐれてしまい、霧の中の館に迷いこんでしまいます。そこには宇宙人・トークがひとり住んでいました。

300年前、地球によく似たトーク星から飛来した友好的な宇宙人たちは、地球人と交流を図ろうとしましたが、地球人同士が戦乱に明け暮れる状況に絶望して山奥に平和郷をつくります。しかし、近くの地球人たちに見つかってしまい「髪の毛が赤い」という理由だけで「鬼」とみなされ虐殺されてしまいました。トーク星では3千年前に武器を捨ててしまっていたので無抵抗のままだったのです。その生き残りであるトークは人間から身を隠して300年間、武器を作りながらずっと復讐の機会を待っていました。霧の館にひとり住んでいるトークは殺された妹・シシーの面影を、迷い込んだ宇宙警備隊のアンヌ隊員に見出して幽閉します。アンヌを救出しに来たウルトラ警備隊に撃たれて倒れますが、死体から彼の怨念が悪鬼の姿となって抜け出し、巨大にそびえ立ちます。悪鬼はウルトラセブンを窮地に追い込みますが、「復讐なんていけないわ」というアンヌの声にふと力が抜けて、セブンのウルトラビームに眉間を貫かれてしまいます。悪鬼の姿がトークの姿にもどり、その屍は朝の陽光のなか風化し、ひらひらと空に舞い上がり光の中に消えていきました。最後に、涙に濡れたアンヌの声が響きます。「…憎しみが、トークを鬼にしました。愛して許すことが、トークを本当の姿にもどしたのです。」

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異質を恐怖するあまり、差別する側が鬼のレッテルをはって排斥し迫害する。一方、差別される側も深く強く長い憎しみの果てに鬼になりうる。本物の鬼となる。上原正三の「マイノリティ」「差別」というライターとしてのテーマが託された代表作品です。

上原は「帰ってきたウルトラマン」第33話「怪獣使いと少年」で、さらに強いメッセージ性をもって、このテーマに挑みました。あまりのナマナマしさに「放送できない」と騒ぎ出したテレビ会社に対して当時のプロデューサーが「上原の思いが込められた作品だから放送させてくれ。罰として、上原と東條(当時の監督)を番組から追放する」と談判してくれたそうです。

もう40年以上も前の話ですが、彼ら世代の沖縄人としてのアイデンティティに対する誇りや気骨が、私たち世代にも確実に伝わっているように思います。

 

(ここまで)

 

2016-04-29 15.33.41

 

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