青空文庫に宮沢賢治の「オツベルと象」があります。
あらすじは以下のようになります。
ある牛飼いが物語ります。
地主のオツベルは16人もの百姓を抱えていますが容赦がなく、そのうえ強欲でした。
ある日、そういうところにどうしたわけか大きな白い象がやってきます。
オツベルは白象を言葉巧みにだまして自分の所有物にしてしまいます。そして白象に過酷な労働を課すのでした。
白象はオツベルの内心を知らず、はじめは労働を楽しんでいました。夜毎、白象は月に「たのしいな」と報告をします。
しかし、徐々に食べ物を減らされ、過酷な労働で体は急速に弱っていきます。
ついに白象は「苦しいです。さようなら」と月に報告します。月は白象に仲間たちに手紙を書くように助言をします。
それを読んだ仲間の象たちは怒り狂い、オツベルの邸宅へと押し寄せ襲撃するのでした。
白象は、最後に仲間の象たちに助けられて鎖と銅をはずしてもらいました。
この小説は次の最後の2行が印象的です。
「ああ、ありがとう。ほんとにぼくは助かったよ。」白象はさびしくわらってそう云った。
おや〔一字不明〕、川へはいっちゃいけないったら。
この2行は昔から、宮沢賢治にとって「川」が何を意味するものなのか、すごく想像をかきたてられる文章ですね。
物語っている牛飼いが現実にもどって、この話を聞いている子供か牛を注意しているものという説。
流されるもの(「欲」や「無知」など)への戒めを込めた比喩という説。
白象がさびしく笑っているのはオツベルを改心させることができなかったことを悲しんでいるから…。
白象はジャータカ物語では釈迦の化身として登場するからというのが理由です。
いずれにせよ、深く考えさせられる物語です。