外来での会話です。
「少し暑さがやさしくなっていますけど、いつでも水分を摂ることは大事ですよ。」
70歳を少し超えている女性は、私の言葉を受けて答えました。
「昔からあまり水飲まない人だからね。私。」
「う~ん。でもね。血液検査に『水分不足』って出てるからね~。」
「え?『水分不足』って、出てるの?」
「そうそう。これね…。」とあらかじめプリントアウトした検査結果を提示しました。
腎臓のはたらきをみるのに、私たちは通常「尿素窒素」と「クレアチニン」を測定します。
いずれもタンパク質が代謝されるときに出てくる物質で、腎臓の老廃物の排泄機能の指標となります。
タンパク質は代謝されるとアンモニアになります。しかし、アンモニアは強い毒性があるため、さらに代謝される必要があり、毒性がはるかに低い尿素となります。
尿素窒素は尿素が含まれる窒素成分のことです。
正常な状態では、尿素窒素の値はおおまかにクレアチニンの値の約10倍と考えて良いです。この比率は実は病態を考察するのに重要な情報なんですね。
クレアチニン 0.7の方は、正常な状態だと尿素窒素は約10倍なので7前後。
けれども、比率が10倍よりも大きくなった場合には、脱水を強く疑います。
例えば、クレアチニン 0.7だとして、尿素窒素が30とかだったら、水分はちゃんと飲んでいたかどうかを問診します。
ほかには消化管出血や心不全のときも、10倍よりも大きくなります。
水分が不足していないかどうか、血液検査の結果をもう一度見直してみるのも良いかもしれませんね。