「青空文庫」を覗いてみると、少年期に触れた詩や小説にふいに出くわすことがあって懐かしさに時間を忘れて“立ち読み”することがあります。
中原中也の「山羊の歌」を見つけた時は、まっさきに頭に浮かんだあのフレーズを探していました。
「汚れつちまつた悲しみに」です。
詩人が放つ「汚れつちまつた悲しみ」という言葉は自嘲的で悲哀さを醸し出していながら、淡々と事象を並べていく詩の構成にひきつけられていきます。
この詩に関しては、余計な解釈など気にせずにそのままを詠んでいたいですね。
たくさんの方たちが、この詩に曲をつけてきたのも分かる気がします。
汚れつちまつた悲しみに……
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘(かはごろも)
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢む
汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気(おぢけ)づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……