遅まきながら、最近やっとサン=テグジュペリの「星の王子さま」を読んだことをお話しました。
サン=テグジュペリにとても興味が出てきて、彼の著作をまとめて読み始めたところでした。
サン=テグジュペリが好きで好きでたまらない方たちには、「何を今さら」と思うかも知れませんね。
浅薄さをお許しください。
けれども、今回は新潮文庫のカバー絵を見て、鳥肌が立ちました。
後にアニメ映画 「風立ちぬ」に帰結した、構想の種がここにある気がしたからです。
このカバー装画を担当したのは、宮崎駿監督なんですね。
1998年とあります。
そして、巻末の解説を担当しているのも、宮崎駿監督でした。
タイトルが「空のいけにえ」です。
約8ページの短い文章ですが、ただ単に飛行機や飛行士に対してのロマンチシズムを語りません。
「空を飛びたい」という人類の夢が多くの若者の命を奪い、さらに戦争が飛行機といういけにえを求めたこと、その残酷な歴史を冷静に振り返りながら、なおも惹かれてやまない自分自身の「凶暴さ」を吐露した文章になっています。
「風立ちぬ」からさかのぼること、約15年前の文章です。
ここに足あとが残っていたんだと、勝手に得心していました。
特に私の心に残った言葉を引用して紹介します。
パイロットは全神経を集めて、風景のわずかな兆しの中に天候の変化を読みとろうとした。白い雲も強固な岩山に等しい危険な罠。空が気紛れなひと吹きで郵便機を破壊してしまうのを彼等はよく知っていた。充満する危険の中で、張りつめ覚醒した彼らの見た世界はどんな眺めだったのだろう。
風景は、人が見れば見るほど摩耗する。今の空とちがい、彼等の見た光景はまだすり減っていない空だった。今、いくら飛行機に乗っても、彼等が感じた空を僕等は見る事ができない。広大な威厳に満ちた大空が、彼等郵便飛行士達を独特の精神の持主に鍛えあげていったのだった。
肝心の「人間の土地」の内容は、また改めてご紹介しますね。