浦添市の医療情報紙「メディカル・ナビ」に原稿依頼がありました。
市民の皆さんの健康や医療に関する意識を向上させることを目的とした広報紙です。
浦添市以外の方は手に取る方も少ないと思いますし、ここで紹介したいと思います。
「腎臓の病気をどうやって見つけますか?」
「私の知り合いに…」と言って話をしてくれた方がいました。
「全く病気らしい病気もしてこなかった健康な人なんだけど、体調が悪くて病院に行ったら透析が近いって言われてびっくりしたらしい。」
実はそういうお話は珍しいお話ではないのです。
現在透析をされている方にお話を伺うと「健診受けてなかった」や「再検査が必要って言われたけど仕事が忙しくて病院に行けなかった」という方が多くいらっしゃいます。
腎臓をふくめて心臓や肝臓など、人間の内臓ははたらきものが多く、ギリギリまで頑張ってしまうものです。特に腎臓の病気はギリギリまで悪くならないと症状が出ないという特徴があります。
それでは、私たちは腎臓の病気をどうやって見つければ良いのでしょう。
鍵となるのが尿検査と血液検査です。
尿はもちろん腎臓でつくられています。もともとは体中を循環している血液を濾過してつくられる原尿と呼ばれるものです。
この原尿を濃縮したり薄めたり、必要なものや大切なものが混ざっていたらまた血液の方へ掬い上げてみたり。体に悪い老廃物はそのまま原尿にとどめておきます。
結果的にヒトは1日に約1.5リットルから2.5リットルの尿をつくっていきますが、健康な尿の成分をみると、ほとんどが老廃物で、たんぱく質や糖質、赤血球などは混ざっていません。たんぱく質や糖質は、本来人間が生きていくのに必要で大切な栄養素だからです。
尿検査の項目である尿タンパクや尿潜血は、腎臓に何らかのトラブルが起きていることを知らせてくれているのです。
琉球大学の井関邦敏先生が発表されたグラフをご覧ください。縦軸が腎不全にいたる率を示しています。尿タンパクが1+、2+、3+となるにしたがって、腎不全になるリスクが高くなっているのがわかります。
そして、腎臓のはたらきの良し悪しは血液検査で調べます。具体的な検査項目はクレアチニン、eGFRです。
クレアチニン値は数値が高ければ高いほど、腎臓のはたらきが落ちているということを示しています。一方eGFRはクレアチニンをもとに糸球体濾過量を算出したもので、これは数値が低ければ低いほど腎臓のはたらきが落ちていることを示すものです。
このように尿検査も血液検査も腎臓の今の状態を知る情報の宝庫なのです。この情報を健康に生かすために是非健診を受けることをおすすめいたします。