魂の演技レッスン22 ~輝く俳優になりなさい! ステラ・アドラー著
断るまでもなく、今さら私は俳優を志望する者ではありません(笑)
でも、人生できっと経験するはずのないことを追体験できることが「読書」の醍醐味だとしたら、この本を手に取ったのは悪くない選択でしょう?
ステラ・アドラーという方はアメリカの女優で演技教師。彼女が設立した演劇学校では、ロバート・デニーロやマーティン・シーン、ロイ・シャイダーなどが学んだそうです。
この本は、彼女のレッスンの中身を書き起こしたものです。
例えば、第一回のレッスンでは、こう生徒に言っています。
「さて、これから皆さんの成長を手助けしていきますが、その前に、あなたの目標は明確ですか?」
「目標を紙に書くこと。これが最初の課題。」
「目標を書けば、すぐわかるでしょう?足を踏み入れたことのない領域にチャレンジする時は、自分が知っている物事の範囲より外側にあることを考える必要があるってこと。」
第七回のレッスンの最後には、こんな言葉で締めくくっていました。
「人物がどんな人間か、その人の感情を見ても判断できない。行動が人物を表すのです。感情は行動の結果、生まれるものです。」
とても崇高な方なのですね。演技する人間の資質についても「俳優は精神の貴族である」と教えます。
「貴族と同じく、俳優も思想の世界に生きている。劇作家が描く世界に生きている。あなたが思想について話せば、それはあなたの思想になる。それを積み重ねて、表現者として人間として、力が伸びていくのです。」
「いろいろな思想を吸収できる精神を持って下さい。そして世界に向けて思想を伝え、訴えて下さい。それが貴族の精神であり、俳優の精神です。」
素晴らしい教師は、その分野だけでなく、あらゆる分野に通用する実例だと思いました。