「ポアンカレ予想」

 フェルマーの最終定理 サイモン・シン著

この本を読んだ時もそうでしたが、数学者たちの「哲学」に触れた時、とても気持ちがワクワクします。

フェルマーの定理とは、アマチュア数学者であるフェルマーが17世紀に書き残したメモ

n≧3のとき n+Yn=Zn を満たす自然数 X、Y、Zは存在しない
この命題について、真に驚くべき証明方法を 私は発見した。だが、それを書くには、 この余白は狭すぎる。 

というものです。

350年以上もの長い時を経て、この定理の証明は天才数学者ワイルズの出現を待つしかありませんでした。

「フェルマーの最終定理」は3世紀にわたる数学者たちの苦闘を描いた数学ノンフィクションで、読む者を引き付けてやまない感動ドラマが展開していきました。

 

さて、今回は「ポアンカレ予想」についての本です。

 NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 NHKスペシャル 春日真人著

 

私は一流の数学者や物理学者は、違う宇宙世界を観ているのだと信じている方です。

「五感で感じて脳に描く世界と、実際のそこに存在する物質的な世界が一致する証拠はない」とはよく言われる言葉ですね。

アインシュタインも「最も信用ならないのは、宇宙の存在ではなく、宇宙が存在するという私たちの認識である」と言っていました。

人間が意識を駆使して現実を創造する者であるならば、数学者は、数学という道具を使ってこの世界を創りあげているはずです。(“はず”としたのは、凡人である私には想像するしかないので。)

この本にも紹介された「ウィリアム・サーストン博士」が語る双曲空間について読んだ時、ふとそんな尊敬と憧憬が入り混じった感情を抱きました。

 

 

さて、「ポアンカレ予想」とはいったいどんな「予想」でしょう。

この本の説明を引用します。

「誰かが長いロープを持って宇宙一周旅行に出かけたと想像してみてください。その人物が旅を終え、地球に無事戻ってきたとしましょう。そのとき、宇宙にグルリと巡らせたロープは、いつも必ず自分の手もとに回収できるでしょうか」

「もしロープが必ず回収できるならば、宇宙は丸いと言えるはずだ。これが、今日『ポアンカレ予想』と呼ばれているものなのです」

「ポアンカレ予想」とは、簡単に言えば宇宙の形を予想するもの。

どんなに科学技術が発達しても、人間が宇宙の外へ出るなんてことはできません。

つまり、たった一本のロープを使うだけで「ロープを回収できれば宇宙は丸く、そうでなければ丸くない」を確認できるはずだとポアンカレは考えたのでした。

この予想が正しいのかどうか、ポアンカレの呼びかけに数学界は実に100年以上も苦闘することになります。

 

それをロシアの天才数学者、グリゴリ・ペレリマン博士が証明しました。

博士は数学界のノーベル賞と言われるフィールズ賞を辞退したとか、証明の直後から隠遁生活を送ってしまったとか、数学とは関係のない話題でメディアに大騒ぎされてしまいました。

この本は、ペレリマン博士をはじめとした「ポアンカレ予想」に関わった数学者たちを追ったドキュメンタリーです。
ワクワクして面白くて、また人間の可能性が嬉しくて、あっという間に読んでしまいました。

数式は出てきませんから、数字の苦手な方にもおすすめの本です。

 

 

 

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