LDHという検査があります。
患者さんから「これはどういう検査ですか?」と質問されることも多い検査です。
できるだけ分かりやすく説明しようとするのですが、それでもなかなか理解しにくいだろうなと思います。
LDHというのは、「乳酸脱水素酵素(にゅうさんだっすいそこうそ)」の略です。いわゆる逸脱酵素(いつだつこうそ)と呼ばれているもので、まずそれから説明した方が良さそうですね。
Wikipediaの説明を借りると、以下のようにあります。
「逸脱酵素(いつだつこうそ)とは、本来細胞内で働いている酵素が何らかの理由で血液中に流出したものである。 流出する理由としては、細胞自体の破壊、もしくは細胞膜の透過性亢進などで、多くの場合は組織障害に由来している。
臨床上、逸脱酵素の血中濃度を測定することで臓器がダメージを受けていないかを推測することが可能で、臨床検査の一環として頻繁に行われている。」
逸脱酵素ごとにどの臓器に分布しているかが分かっていますから、ダメージを受けている臓器を推測できるわけです。
LDHは、肝臓、赤血球、筋肉、悪性腫瘍などにあります。わりと多くの組織に分布しているのですね。説明がしにくいのはそのためでもあります。
クレアチニンやγ-GTPなら「クレアチニンが高くなっているのは腎臓のはたらきが弱いから」とか「肝臓が無理をしている」などと簡潔に説明できるのですが、LDHはある特定の臓器に限局していません。
しかも、LDHはLDH1からLDH5までの5種類あって、病気によって異常値を示す種類が異なります。
そのため、LDHが高い場合にはどの種類のLDHが高いのかを確かめることになります。
LDH1とLDH2なら、心筋梗塞、腎梗塞、悪性貧血、赤血球がこわれる溶血性貧血など。
LDH2とLDH3なら、多発性筋炎、筋ジストロフィー、白血病、消化器がんなど。
LDH5なら、急性肝炎、肝細胞がん、子宮がんなど。
つまり、LDHが高値であると、全身を調べた方が良いというわけです。
正常値は120から245 IU/L。
関節リウマチの場合も、軽度上昇することがあります。