「その女 アレックス」

 

今回の出張の飛行機上の読書の友はサスペンス小説でした。

 その女アレックス ピエール ルメートル著 橘 明美訳

作者のルメートルは、人物像に限らず物事には多面性があり、一方の面からでは真実は語りえないということを随所で示しています。

登場する多くのものが二転三転で様相をくつがえすので、読者を飽きさせません。

そのため読み終わった後に、「アレックスはどんな気持ちだったのか?」と冒頭の数か所を読み直しました。

放心状態のなか、それだけ主人公の心に寄り添わざるを得なかったと言えます。

 

ストーリーとしては陰惨で救いようがないのですが、最後の判事の言葉を読者は承諾し、救われた気になります。

「これが真実だとかそうでないとか、いったい誰が明言できるものやら!われわれにとって大事なのは、警部、真実ではなく正義ですよ。そうでしょう?」

 

訳者あとがきに、この小説の映画化がすすんでいるという情報がありました。

映像描写のような文章ですから映画化しやすいのでしょうが、作る側としてはファンの期待がプレッシャーかも知れません。

絶対的孤独の中に生きてきた主人公アレックスに心を寄せてしまうサスペンスでした。

 

 

 

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