この本は、古代ローマの詩人 オウィディウスが著した書物です。
ギリシア神話の中で、変身を主要モチーフとする多くの物語が収載されています。
例えば、今日紹介するお話なども、ひまわりがなぜ太陽に向かって回るのかを説明する神話として有名です。
水の女神であるクリュティエは太陽神ヘリオスの恋人でした。
しかし、太陽神の心を長くとどめておくことはかないませんでした。
太陽神からクリュティエを忘れさせたのが、ペルシア王オルカモスの娘 絶世の美女であるレウコトエでした。
クリュティエは嫉妬に燃え狂います。
恋敵に対する怒りにあおられて、神との密通を言いふらし、ことさら悪く脚色して父親に告げたのでした。
厳格で気性の激しい父親は、情け容赦なく娘を深い穴に埋めて命を奪ってしまいます。
それを知った太陽神は、深い悲しみの底に沈むのでした。
クリュティエは恋の恨みを果たしたものの、太陽神の心を再び取り戻すことはできませんでした。
そればかりか、太陽神は彼女に近づこうともしません。
クリュティエは空の下で、夜も昼も、裸の地面に座り込んで、空を行く太陽の顔をいつまでも見つめていました。
東の空から西の空へ行く太陽へと自分の顔を向けているばかりだったのです。
とうとう、体が土にくっつき、体は痩せ細っていき、一輪の花になってしまいました。
花になった今でも愛おしい太陽神のほうばかりを向いているのは、愛だけは残っているのだと言います。