病院でおこなった検査結果は、大切な記録として保管していてくださいね。
例えば、尿検査で「亜硝酸塩」という検査項目があるのをご存知でしょうか。
外来でよくある質問のひとつですので、この「亜硝酸塩」について説明したいと思います。
一般的に尿には「硝酸塩」という成分が含まれています。(誤字ではありません。亜硝酸塩ではなく硝酸塩です。)
硝酸塩というのは、自然界ではもともと土壌などに広く分布しています。
植物は養分として窒素(N)が必要で、そのために主に硝酸塩(NO3–)という形で根っこから吸収しています。
硝酸塩は一般にホウレンソウやチンゲンサイなどの葉野菜に多く含まれる傾向にあります。
食物として野菜を食べると、体内に吸収された後、ほとんどは腎臓から尿として排出されます。
さて、腎臓で作られた尿はいったん膀胱にためられとどまります。
そこに大腸菌などの細菌が入り込むと、尿中の硝酸塩が化学変化を起こして亜硝酸塩になります。
ですから、尿検査で亜硝酸塩がある場合は、細菌感染、つまり尿路感染症を疑うことになります。
しかし、この検査は少々不確かなところがあって、感度は50%前後です。(特異度は90%前後)
まず、亜硝酸塩に変化するためには4時間以上が必要だとされています。
つまり膀胱に長く尿がとどまっていなくては十分に変化せず、偽陰性になる可能性が高くなります。
膀胱炎では膀胱刺激症状で尿の回数がどうしても多くなりますから、それだけでもなかなか難しいのです。
それから、硝酸塩を亜硝酸塩に還元する能力のある細菌は、種類が限られているということです。
大腸菌などは還元作用をもちますが、グラム陽性球菌や緑膿菌などは亜硝酸塩に還元する能力がありません。
けれども、初診の尿路感染症の原因菌はほとんどが大腸菌ですから、それを理解していればおおいに役に立ちます。
ついでに付け加えれば、細菌が尿中に存在することが、必ずしも尿路感染症とはいえないということは大切なポイントです。
この検査は試験紙ですぐに結果が出ること。
スクリーニングの方法として良い方法だと思います。