「ドアノブ・クエスチョン」という言葉があります。
医師が診察の終了間際に「ほかに何か気になることはありませんか?」と確かめることを言います。
また、次のような場面のことを言うこともあるようです。
患者さんがその日、本当に気になることをどう切り出して良いか迷ってしまって
(言い出しにくいことってありますよね。)
診察が終わってしまいました。
「○○さん。お薬を出しておきますね。カルテをまとめますから待合室でお待ちいただけますか?」
「…はい。」
離室を促され、一度は椅子から立ち上がってはみたものの、やはり目的を達していないことに意を決して
「先生、あの…」
診察終了間際になって、やっと不安になっている原因を初めてお話しするという場面です。
その時は、きちんとお訊きしていなかったことを詫びて
もう一度椅子に座ってお話してもらうようにしています。
特に頑強そうに見える男性ほど、風邪の症状でいらした時には
「ほかに心配になられていることはないですか?」
とお聞きすると、風邪以外に気にかかっていることをお話してくださることが多いものです。
数年前から指摘されていながらそのままにしている検診の異常が、今回の症状を引き起こしたかも知れないとか
あるいは、数日後に控えている仕事上の大切な取引を自分の体調不良で台無しにするわけにはいかないとか。
高齢で体力のない家族にうつすわけにはいかないとか。
「風邪」に対して、いろいろな市販薬がある世の中だからこそ
「風邪」でクリニックに受診される人々の想いもそれぞれです。
先日、つい時間に追われ「気になることはありませんか?」という「ドアノブ・クエスチョン」を怠ってしまうことがありました。
その患者さんが診察室を出る間際に (まさしくドアに手をかけようとするときに)
「先生、ガンってことはないですよね?」
と言われました。
はっとしました。
お聞きすると、親戚にガンの方がいて、自分もそれが気になって不眠がちとのことでした。
やはり、言い出しにくいことを言ってもらうこちら側の態度が必要なのだと反省しました。
クリニックの問診票には一番最後の質問に
「病気に関することで、一番心配していることは何ですか?」という項目があります。
口に出しづらいこともぜひ一言お知らせしていただけたらと思います。