今回は「歩行パターンから読み解く睡眠の質」という話題についてです。
最近、ある研究が睡眠と歩行の2つの関係性に着目し、面白い発見をしました。
研究チームは、睡眠の質が人の歩き方にどのように影響するかを調べるために、機械学習技術を駆使しました。
参加者たちは、18歳から36歳の範囲で、様々な背景を持つ123人の成人でした。
彼らはまず、過去24時間の活動に関する質問に答え、ピッツバーグ睡眠質指標による睡眠の質の評価を受けました。
その後、歩行パターンを詳細に分析するために、身体のさまざまな部位に加速度センサーを装着し、歩行テストを受けました。
その結果が、興味深いのです。
歩行パターン、特に歩行を開始する時の骨盤の傾きや腰椎の回転運動の範囲から、睡眠の質が予測できることがわかったのでした。
具体的には、睡眠の質が低いとされる人々は、歩行の開始時や方向転換をした後の歩き始めで、骨盤の傾きにあまり変化が見られず、一定の歩行速度を維持するのが難しいことがわかりました。
睡眠の質と身体の動きには深い関係があるということですね。
確かに、よく眠れなかった当直明けに「フラフラしてる~」とよく言っていましたが、比喩などではなく、実際に足にきていたようです。
「寝不足は足腰にくる」というのは本当だったんですね。
睡眠の質の低下は、ストレスや不安、健康問題、睡眠環境の質の低さ、そして過度のカフェイン摂取や就寝前のスクリーンタイムなどの生活習慣に起因することが多いです。
これらの問題は、心血管疾患、肥満、糖尿病、精神健康障害といった深刻な健康問題を引き起こすリスクを増大させます。
しかし、この研究はさらに一歩進んで、睡眠が不十分な夜を過ごすと、翌日の歩行パターンに微妙な変化が現れることを明らかにしました。
これは、特に若年成人の間ではあまり認識されていなかった現象です。
また、歩行パターンの分析を通じて、睡眠の質の問題を早期に発見し、介入するようになってくるかも知れませんね。
将来的には、カメラの前を通ったら、「よく眠れていないですね!」とか表示されたり。
私たちの何気ない歩き方が、実は睡眠の質の鏡であったわけです。
元論文:
Martin J, Huang H, Johnson R, et al. Association between Self-reported Sleep Quality and Single-task Gait in Young Adults: A Study Using Machine Learning. Sleep Sci. 2023;16(4):e399-e407. Published 2023 Nov 22. doi:10.1055/s-0043-1776748
