このコロナ禍のなかで、毎日の体温測定が習慣化されてきたおかげで、思わぬ発見もありました。
「37℃が私の普通」という人もいれば、「35℃台が自分の平熱だから36.5℃を超えたら微熱」という人もいて、実際にモニタリングすることの意義を再確認したものです。
そして、人の体温は、その日の健康状態や活動レベル、さらには感情の変化によっても変動するものだということもわかりました。
例えば、緊張すると手が冷たくなるというのは、よく経験することです。
つまり、心の状態が体温に影響するということですね。
では、ここで問題です。
「体温が心の状態に影響するのでしょうか?」
そのテーマに取り組んだのが、今回紹介する研究です。
研究チームは、20,000人以上の参加者を対象に約7ヶ月間にわたり、自己申告による体温とウェアラブルセンサーで計測した体温、そしてうつ症状についてのデータを収集しました。
その結果、体温が高いほど、うつ症状の重さに関連していることがわかりました。
具体的には、体温が平均して0.1℃上昇するごとに、軽度のうつ症状を持つ可能性が約3%、中度のうつ症状を持つ可能性が約5.1%、重度のうつ症状を持つ可能性が約11.4%増加しました。
この関連は、年齢や性別、体温の測定時間などの共変量で調整した後も維持されたそうです。
つまり、体温が心の健康に影響を及ぼす可能性があるということですね。
さらに、この研究はうつ病治療における新しいアプローチの可能性を開くものかも知れません。
しかし、なぜ体温がうつ症状と関連するのか、そのメカニズムはまだ完全には解明されていません。
メカニズムはわかりませんが、熱がある時に体と気持ちもつらいのは、自然なことですね。
心が落ち込んだ時に、熱がある時のように、おでこに「冷えピタ」を貼ったりしたら、単純な私は復活するかも知れません。
元論文:
Mason AE, Kasl P, Soltani S, et al. Elevated body temperature is associated with depressive symptoms: results from the TemPredict Study. Sci Rep. 2024;14(1):1884. Published 2024 Feb 5. doi:10.1038/s41598-024-51567-w
