高血圧患者の立ちくらみをどうすべきか?

 

多くの患者にとって、血圧の管理は日々の健康維持に不可欠な要素です。

ところが、あまり厳格に血圧のコントロールを行おうとすると、立位低血圧(立ちくらみ)を引き起こすリスクがあります。

そのため、全ての患者に対して積極的であるかというと、必ずしもそうではありませんでした。

特に、低血圧は高齢者の患者において心配されることです。

立ちくらみがひどいと、転倒のリスクが高まりますし、ひどい場合は失神の危険もあるからです。

医師は「この薬を飲んだらフラフラする」という患者さんの訴えに敏感です。

症状が強いようなら、すぐに内服をやめるようにと指示を出すものです。

高血圧治療における新たな視点を投げかけるこの研究結果は、9つのランダム化比較試験(RCT)に基づいた個別患者データのメタ分析から得られました。

その主な発見は、立位低血圧(立ちくらみ)の有無にかかわらず、より積極的な血圧管理が心血管イベントのリスクを低減させる可能性があるというものでした。

具体的には、立位低血圧を有する患者(OH群)において、積極的治療による合併症リスクの相対リスク(Hazard Ratio: HR)は0.83(95%信頼区間: 0.70-1.00)、立位低血圧を有しない患者群で0.81(0.76-0.86)でした。

これは、立位低血圧がある患者においても、積極的な血圧管理が心血管リスクを減少させることを示しています。

多少乱暴な言い方をすれば、「立ちくらみがあったとしても、厳格に血圧をさげた方が、心血管リスクを減らせる」ということです。

一方で、立位低血圧を有する患者における全死因死亡率のHRは0.92(0.72-1.18)と、統計的に有意な差は認められませんでした。

つまり、立ちくらみがあったとしても、積極的に血圧を管理することは安全であるという可能性を示しています。

そうは言っても、実際の日常診療の現場では、なかなか難しい問題です。

「立ちくらみがある患者でも、積極的な血圧管理がもたらすメリットは、潜在的なリスクを上回る可能性がある」ということを、医療提供者の頭の片隅に置いておくぐらいが現実的でしょう。

患者さんの生活の質を向上させ、より健康な未来を実現するために、高血圧の治療戦略について、私たちは常に学び、進化し続けなければなりません。

立位低血圧を有する患者における積極的血圧管理の安全性と効果については、今後さらに研究が求められるものです。

 

元論文:

Juraschek SP, Hu JR, Cluett JL, et al. Orthostatic hypotension, hypertension treatment, and cardiovascular disease: an individual participant meta-analysis. JAMA. 2023;330:1459-1471.