腎臓は私たちが日常生活を送るために黙々と働く「がんばり屋」です。
ちょうど自分の拳ほどの大きさで、背中の下部に位置するこの二つの器官は、血液をきれいにして身体を生かし続ける役割を担っています。
しかし、その働きが見えにくいからこそ、腎臓の健康状態を把握することがしばしば忘れられがちになります。
多くの人々はコレステロールや血圧の数値をチェックしますが、それと同じくらい重要なものとして、「腎臓の数値」があります。
この数値を知ることで、腎臓が正しく働いているのか、あるいは何らかの問題が発生しているのかを評価できるのです。
慢性腎臓病(CKD)は、その名前が示す通り、徐々に進行する病気で、しばしばその存在に気付くのは、既に大幅な機能低下が起きてからになります。
予防的な治療が遅れることで、結果として血液透析や腎臓移植が必要となる場合もあるのです。
腎臓の数値は主に2つです。eGFR(推算糸球体濾過量)とuACR(尿アルブミン/クレアチニン比)です。(健診では、uACRは単純に蛋白尿の有無で代用します)
これらの名前は専門的で難しそうに聞こえるかも知れませんが、意味はシンプルです。
eGFRは腎臓が血液をどれだけきれいにしているか、つまり腎臓の「掃除能力」を示すものです。
uACR(≒蛋白尿)は尿中にどれだけのアルブミンというタンパク質が含まれているかを示します。アルブミンが多いということは、それだけ腎臓に何らかのダメージがある可能性を示唆しているのです。
これらの数値を理解するためには、街をきれいに保つためのゴミ収集車にたとえて考えると良いかも知れません。
eGFRはゴミ収集車がどれだけ効率的にゴミを集めているか、つまり街がきれいかどうかを示します。
一方、uACRは街中でどれだけのゴミが落ちているか、つまり街がどれだけ汚れているかを示します。
この2つの数値が揃うことで、腎臓がきちんと働いているのか、問題があるのかを評価できるわけです。
そして、これらの数値は一つの地図、すなわち「CKDヒートマップ」を作成するための材料となります。
このヒートマップはCKDが悪化するリスクと心臓病のリスクを色の深さで示します。色が深ければ深いほど、そのリスクは高まります。(下にヒートマップの図を示します。)
だからこそ、腎臓の数値を知ること、そしてそれを理解することは極めて重要なのです。
早期発見と適切な治療があれば、腎臓病患者の予後は大いに明るくなります。
だから、腎臓の数値を定期的に確認し、自身の腎臓の健康状態について知ることが重要なのです。
