江戸川乱歩著「探偵小説の『謎』」は青空文庫で読むことができます。
この本は、1956年に出版されたエッセイ集で、乱歩が探偵小説のトリックを解説した随筆を集めたものです。
乱歩はもちろん推理作家として有名ですが、評論家、書誌研究家としても活躍した方で、探偵小説のトリックやその歴史を学ぶのに最適です。
この本で、乱歩は探偵小説のトリックを9つの大項目に分けて解説しています。ざっとあげてみますが、この項目を見るだけでも勉強になります。
【1】犯人の人間に関するトリック
A 一人二役
① 犯人が被害者に化ける ② 共犯者が被害者に化けるなど
B 一人二役のほかの意外な犯人
① 探偵が犯人 ② 裁判官、警察、典獄が犯人など
C 犯人の自己抹殺(一人二役以外の)
① 焼死を装う ② その他の偽死など
D 異様な被害者
【2】犯人の人間に関するトリック
A 密室トリック
① 犯行時犯人が室内にいなかったもの ② 犯行時犯人が室内にいたものなど
B 足跡トリック
C 指紋トリック
【3】犯行の時間に関するトリック
A 乗物による時間トリック
B 時計による時間トリック
C 音による時間トリック
D 天候、季節その他の天然現象利用のトリック
【4】兇器と毒物に関するトリック
A 兇器トリック
① 異様な刃物 ②異様な弾丸など
B 毒薬トリック
①嚥下毒 ② 注射毒など
【5】人および物の隠し方トリック
A 死体の隠し方
①一時的に隠す ② 永久に隠すなど
B 生きた人間の隠れ方
C 物の隠し方
①宝石 ② 金貨、金塊、紙幣など
D 死体および物の替え玉
【6】その他の各種トリック
① 鏡トリック ② 錯視 ③ 距離の錯覚など
【7】暗号記法の種類
A 割符法 B 表形法 C 寓意法 D 置換法
① 普通置換法 ② 混合置換法など
E 代用法
① 単純代用法 ② 複雑代用法
F 媒介法
【8】異様な動悸
A 感情の犯罪
① 恋愛 ② 復習 ③ 優越感など
B 利欲の犯罪
① 遺産相続 ② 脱税 ③ 保身防衛など
C 異常心理の犯罪
① 殺人狂 ② 芸術としての殺人など
D 信念上の犯罪
① 宗教の信念 ② 思想上の信念など
【9】トリッキーな犯罪発覚の手がかり
A 物質的手がかりの機知
B 心理的手がかりの機知
各項目ごとに、代表的な作品やトリックを挙げ、その仕組みをわかりやすく解説しています。
乱歩の解説は、わかりやすく簡潔で、探偵小説に詳しくない人でも理解しやすいです。
古くから探偵小説ファンなら必読の一冊と言われていますが、実際に私が読んだのはつい先日でした。
ミステリファンなら、もっと前に読んでおくべきだったと反省です。
