今日は、翻訳家であり詩人である、三好達治さんの詩を紹介します。
リズムがとても心地いい詩ですが、人の世の無常が心に沁みる詩です。
「時間を守って、帰る」というのは、生きとし生けるもの全てに共通した宿命です。
わかっていはいるけれど、人はよほど忘れっぽいのか、見ないふりをしているだけなのか、約束の時間があるのを忘れてしまって生活してしまっています。
明日が、今日と同じような顔をして同じように訪れてくることを漫然と思いながら、無為に過ごしてしまうことが多いです。
かよわい花
三好達治
かよわい花です
もろげな花です
はかない花の命です
朝さく花の朝がおは
昼にはしぼんでしまいます
昼さく花の昼がおは
夕方しぼんでしまいます
夕方にさく夕がおは
朝にはしぼんでしまいます
みんな短い命です
けれども時間を守ります
そうしてさっさと帰ります
どこかへ帰ってしまいます