言葉というものは本当に不思議なものです。
言葉に表さなければ事実に即した思考がピン押しされず、あっちこっちに論理が飛躍して理論的な考察ができないものです。
けれども、雰囲気というかニュアンスで感じた「なにか」を表現しようとする時、無理に言葉の枠に押し込めようとすると、言葉を積み重ねれば重ねるほど、自分の感じている「なにか」とは違ってくるということがあるものです。
「あれ?自分ってこんなことを考えていたんだっけ?」
思いもしない方向へと思考が固定化されそうになって、自分でない他人の思考に支配されそうで、あわてて軌道修正しますが、ざわついた気持ちの悪さが心に残ることになります。
一方で、新しい言葉が、新しい考え方を教えてくれることがあります。
今まで見えていなかったものが、新たな視点がもたらされることで視野が広がる感じです。
人が成長する(変わる)ということは、遣う言葉が変化し、その言葉が人を導くということなのかも知れません。
やはり、人生を助けてくれるのは、言葉です。
下の詩は、川崎洋さんの「言葉」という詩です。
個人的には「言葉に記すと/世界はとたんに不確かになる」という表現が、とてもしっくりいく詩です。
言 葉
川崎 洋
演奏を聴いていなくても
人は
♪を耳の奥に甦らせることができる
言葉にしなくても
一つの考えが
人の心にあるように
むしろ
言葉に記すと
世界はとたんに不確かになる
私の「青」
はあなたの「青」なのだろうか?
あなたの「真実」は
私の「真実」?