児玉清さんがお薦めの本なら、何でも一度は手にとって読むのを楽しみにしています。
何よりも本を愛していた方ですから、まるで児玉さんの足跡を見つけたような感じでワクワクします。
足跡に沿って同じ道をたどっていく安心感もそうですが
「こういう本も読まれていたんだあ。」と驚きを発見することも楽しみです。
「数学的にありえない」(アダム・ファウアー著 矢口誠訳)は、ずばり帯の文字にひきつけられました。
数学がテーマらしいのも気に入りました。
下巻の表紙にある「タリホートランプ」にも目がいきました。
「タリホー」は「バイスクル」と並ぶ、U.Sプレイング・カード社の代表的なカードです。
名前の由来は、ハンターがキツネ狩りの時に、猟犬をけしかける時のかけ声からきています。
マジシャンの愛好者も多く、よく知られているのが日本の代表的クロースアップ・マジシャンの前田知洋さんですね。
専用のトランプは「Tomohiro Maeda MODEL TALLY-HO GOLD FRAME」
ゴールドの枠があるのと前田さんをモデルにしたJOKERの1枚が余分についています。
あえて一般的なバイスクル・カードでなく、タリホーを起用しているところが気持ちをくすぐりました。
かなり、本筋から脱線してしまいましたが (笑)
数学という文字でアレルギーを起こしてしまいかねない人に。
「にありえない」の部分がすごいのです。
「数学的に」は何の知識がなくても、また、理解するつもりがなくても大丈夫です。
作者のアダム・ファウアーについて是非知って欲しいので、訳者あとがきから抜粋します。
「ファウアーはペンシルヴァニア大学を卒業後、各種の仕事につきながらスタンフォード大学経営大学院でMBAを取得し
その後はソニー・ミュージック、J・P・モルガン、アバウト.コムといった有名企業でキャリアを積み重ねた。
しかし、アバウト.コムに在職中、親友の女性が末期癌に冒されていると知らされたことから
「自分が心からしたいことに人生を捧げよう」と決意、思い切って会社を辞めてしまう。
その親友とファウアーは、ともに子ども時代から作家になるのが夢だった。
二人はたがいに励ましあい、夢を実現すべく努力を重ねた。
こうして生まれたのが本書『数学的にありえない』である。
(一方、親友の女性は小出版社から念願の作家デビューを果たしたのち
出版記念パーティーの席で「今日は人生でいちばん幸せな日だわ」と語り
その二週間後に亡くなったという。)」
また6歳の頃から両目を難病に冒されていたファウアーは
膨大な量の小説を図書館の録音テープ版で次々に「聴破」していったといいます。
これら「読書」することは
「医師や両親でさえあたえてくれなかった“逃避”をもたらしてくれる唯一のもの」だったと振り返っています。
そういうエピソードを知ると、このエンターテイメントに溢れた小説に対して、ぐっと胸にせまるものがあります。
それを抜きにしても、とにかく面白い!
エンターテイメントにあふれたサスペンス。
「数学的にありえない」はお薦めの一冊です。