成田亨さんというアーティストがいました。
昭和40年に円谷特技プロダクションで「ウルトラQ」の美術監督として活躍され、その後も「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「ヒューマン」のキャラクターデザインをされた伝説的な方です。
成田亨さんがその手記で、ウルトラ怪獣のデザインをするにあたっての三つの規範を定めていたというお話をされていました。
① 怪獣は怪獣であって妖怪(お化け)ではない。だから首が二つとか、手足が何本にもなるお化けはつくらない。
② 地球上のある動物が、ただ巨大化したという発想はやめる。
③ 身体がこわれたようなデザインをしない。脳がはみ出たり、内臓むき出しだったり、ダラダラ血を流すことをしない。
これらは、成田さんの「健全な子供番組」をつくるための自らに課した困難な挑戦でした。
どんなに困難かというと、少し想像してみてください。例えば、このブログでも再三取り上げているギリシア神話に登場する怪物たち。
どのモンスターにも、上の3つの要素があるとは思いませんか?
人間が古来から想像する怪獣のイメージに頼らないということは、大きな挑戦だったと思います。
成田さんは、怪獣だけでなく、宇宙人の造形に対してもこだわりを持っていました。
「地球攻撃に来るほどの宇宙人は勇者に違いありません。星の国の武士、あるいは騎士と思いたいのです。地球人にとっては悪なのだが、星の国から見たら勇者、その姿には不思議な格好よさがなければなりません。」
そういう成田さんの想いを知った後に、成田さんが製作した怪獣や宇宙人たちを改めて見ると、その造形にさらに親しみが湧いてくるのを感じます。