ASMRって何?

 

ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)という用語は、私たちの日常のリラクゼーションや睡眠支援手段として、広く知れわたっているように思います。

その背景には、YouTubeやTikTokなどでのインターネットによるASMRコンテンツの普及があります。

しかし、多くの人が関心を寄せているわりに、科学的な研究はそれほど進んでいないように思います。

そんななか、ルール大学ボーフムのTobias Lohaus氏らが行った「ASMR: A PRISMA-Guided Systematic Review」という包括的なレビューが出ました。

ASMRは、特定の視覚や聴覚の刺激によって、「頭がぞわぞわする感覚」や「背中にかけてのチリチリした感じ」、心地よさやリラクゼーションを引き起こす現象です。

個人によって感じ方や強さは異なるものの、多くの人々に共通の体験を提供しています。

Lohaus氏らの研究チームは、PubMed、SCOPUS、Web of Scienceなどのデータベースから、ASMRに直接関連するオリジナルの実証研究を含む科学論文を厳格に選定し、分析しました。

彼らのレビューでは、54の研究がこの基準を満たすことが確認され、ASMRの経験がどのようにして一貫したものとなるのか、そのメカニズムを明らかにしました。

ASMRを感じるトリガーは人それぞれで、囁き声や紙の音、髪を梳かす音、優しい手の動きなど、様々なものがありました。

また、個人によっては、静かな環境で細かい作業をする動画や、軽いタッチ、注意深い視線を感じさせるような動画からASMRを感じることもあります。

ASMRには、ストレスや不安の軽減、特定の性格特性との関連、認知的結果への影響など、心理的および生理的な相関関係が存在することが明らかにされています。

また、特定の脳活動パターンや心拍数、血圧の低下など、リラクゼーションとストレス解消に関連する生理学的な測定値にも影響を与えることが示されています。

しかし、ASMRが長期的なメンタルヘルスに与える影響については、まだ確かな研究結果が得られていないため、今後の研究でこの点を明らかにする必要があります。

ASMRが持つリラクゼーションやメンタルヘルスに対する潜在的な利点を探ることで、将来的には新しいリラクゼーション技術としての可能性が広がるかもしれません。

 

元論文:

Lohaus, T., Schreckenberg, S. C., Bellingrath, S., & Thoma, P. (2023). Autonomous sensory meridian response (ASMR): A PRISMA-guided systematic review. Psychology of Consciousness: Theory, Research, and Practice. Advance online publication. https://doi.org/10.1037/cns0000368