フィトケミカルと偏頭痛

 

「フィトケミカル」という言葉を、実は初めて知りました。

Google先生によれば、フィトケミカルというのは、植物が紫外線や昆虫などから身を守るために作り出した色素や香り、辛味、ネバネバなどの成分を指すのだそうです。

人にとっては栄養素というわけではないのですが、健康に影響を与えることがわかってきたのだそうです。

実は、第7の栄養素や植物栄養素とも言われています。

フィトケミカルというとなんだか目新しい感じがしますが、具体的にその名前を並べてみると、耳慣れたものばかりなので、「へえ」という感じです。

例えば、お茶の渋味成分であり、抗酸化作用がある「カテキン」

トマトの赤い色素成分で、これまた抗酸化作用があるとされる「リコピン」

ブルーベリーなどの青い色素成分の「アントシアニン」

唐辛子の「カプサイシン」

わざわざ「フィトケミカル」などと言わずに、最初からそう言えば伝わるのに、と思ってしまいました。

さて、今回紹介する論文は、食事に含まれるフィトケミカルが偏頭痛とどう関わるのかというテーマです。

それに答えるために、イランの研究チームが非肥満成人の偏頭痛患者を対象に調査を行いました。

彼らは、参加者の食事からフィトケミカル指数(DPI)を算出し、偏頭痛の臨床的特性や心理的状態との関連性を調べました。

DPIとは、フィトケミカルを豊富に含む食品から得られるエネルギーの割合を表す数値です。

結果は、DPIが高い、つまりフィトケミカルを多く含む食事をしている患者は、偏頭痛の頻度が低く、偏頭痛による障害も少ないことが判明しました。

これは食生活が直接的に偏頭痛の頻度や重症度に影響を及ぼす可能性を示しています。

しかし、DPIと心理的状態(抑うつ、不安、ストレス)との間には関連性が見られませんでした。

これは、フィトケミカルが直接的に心理的な健康に作用するわけではなく、その効果は偏頭痛の物理的な側面に限定される可能性を示しています。

研究は262名の参加者を対象に行われ、そのうちの大部分が女性でした。

この性差は偏頭痛が女性により一般的であることを反映しているかもしれません。

参加者たちは食生活に関する詳細な質問に答え、偏頭痛の頻度や重症度、心理的状態を評価するための質問票を提出しました。

フィトケミカルが豊富な食事が偏頭痛に与える影響についての知見は、まさに「食事が薬になる」という古い言葉を現代の科学で証明しているかのようです。

ただし、この研究はあくまで観察研究であり、因果関係を確立するものではありません。

つまり、フィトケミカルが豊富な食事が直接的に偏頭痛を減少させると断言するには、さらなる研究が必要であるということです。

フィトケミカルを多く含む食品とは、主に果物、野菜、全粒穀物、ナッツ、種子など、自然が提供する栄養豊富な食品群を指します。

これらの食品を日々の食事に取り入れることは、偏頭痛の予防や管理だけでなく、全体的な健康維持にも良い影響をもたらすでしょう。

食事と健康の関係については、以前から多くの研究が行われていますが、フィトケミカルと偏頭痛との関係を明らかにしたこの研究は、特に注目に値します。

食生活を見直すことで、私たちはより健康的な生活を送ることができるかもしれません。

 

元論文:

Amani Tirani, S., Balali, A., Kazemi, M. et al. The predictive role of the dietary phytochemical index in relation to the clinical and psychological traits of migraine headaches. Sci Rep 14, 6886 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-57536-7