弾よりも速く!高いビルもひとっ飛び!

エリートスポーツの世界では、ごくわずかな差が勝利と敗北を分けます。

選手はもちろんですが、コーチやトレーナーも、厳しい競争の世界で、有効なコーチングとは何かということを毎日探求しているのだと思います。

その結果、トレーニング方法も日々進歩していきます。

今日紹介する論文は、一周回って元に戻ってきたような感じもしないではないのですが(笑)。

それは「言葉の力」です。

最近、トッテナム・ホットスパーのアカデミーで行われた実験では、選手たちが自分自身を「ジェット機が離陸するかのように」あるいは「フェラーリのように加速する」と想像するだけで、スプリントの速度が平均3%向上することが明らかにされました。

この現象を探求したエセックス大学の研究者たちは、「アスリートに対して言葉を使うことは、彼らのパフォーマンスに即座にかつ明確に影響を与える」と述べています。

つまり、選手の注意を自身の体から外の環境へと向けることで、動作の流れをスムーズにし、パフォーマンスを向上させることができるというのです。

この実験には、トッテナム・ホットスパーのアカデミーに所属する14歳から15歳の若手選手20人が参加しました。

最も効果的だったのは、「空に向かって離陸するジェット機のようにスプリントする」という動機づけでした。

特に、技術的な言語を把握するのが難しい若いアスリートにとっては、彼らの注意力を高め、技術の理解を助ける貴重な手段となります。

この方法の魅力は、エリートスポーツに限定されるものではありません。

学校の体育授業や土曜日の朝のスポーツクラブなど、あらゆるレベルでのスポーツ活動に応用することが可能です。

教師や親が子供たちにスポーツを教える際にも、彼らの想像力を刺激することで、より高い成果を期待することができるでしょう。

これからは、選手たちに対して「もっと速く!」と言う代わりに、「あなたはバイクのように加速する!」と伝える方が効果的だということです。

もしかしたら、かつてのヒーローのキャッチコピーだった「弾よりも速く、力は機関車よりも強く、高いビルをひとっ飛び!」が、当時の若いアスリートたちのレベルを、知らない間にあげていたかも知れませんね。

 

元論文:

Moran J, Allen M, Butson J, et al. How effective are external cues and analogies in enhancing sprint and jump performance in academy soccer players?. J Sports Sci. Published online February 1, 2024. doi:10.1080/02640414.2024.2309814