社会的孤立の状況では体を動かすこと!

 

ほんの3年前の話ですが、私たちは等しく「社会的孤立」を経験しました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、私たちの日常生活に大きな影響を与え、特に社会的接触の減少による精神的健康への影響が懸念されてきました。

「おうち時間」や「Stay Home」、「巣ごもり」といった言葉が、それらをよく表していたと思います。

今回紹介する研究は、「社会的孤立によるメンタルの不調は、とにかく身体を動かすことで軽くなるかも知れない」というものです。

もちろん、研究の動機は、COVID-19パンデミックによる社会的孤立と孤独の増加という、社会の大きな課題から生まれました。

過去の研究で、社会的接触と運動がメンタルヘルスに良好な影響を及ぼすことが示されていましたが、パンデミックはある意味、それらを検証する絶好の機会となったのです。

社会的孤立による死亡のリスクは、肥満や過度のアルコール消費、1日15本のタバコを吸うことと同等だということが知られています。

この研究は、身体活動を社会的孤立の影響と戦う実行可能な戦略として探ることを目指しました。

研究には、18歳から28歳の健康な若者317名が参加し、1週間にわたってモニタリングされました。

また、パンデミック中のドイツで18歳から63歳の健康な大人30名を対象に6ヶ月間の追跡調査が行われました。

参加者は、身体活動を客観的かつ定量的に測定するために加速度計を身につけ、日々の社会的接触と気分をスマートフォンベースの電子日記で報告しました。

研究の結果、時速3マイル(1Kmを12分30秒ぐらいの速度)で、1時間歩くことに相当する適度な身体活動が、一人でいることによるネガティブな気分を打ち消すことができることが示されました。

この身体活動のポジティブな影響は、研究グループ間で一貫して観察されました。

特にパンデミックのような時代において、外出が制限されジムが閉鎖される中でも、自宅での軽い身体活動やエクササイズが心理的なウェルビーイングをサポートしていたということがわかりました。

しかし、この研究には限界も存在します。気分の自己報告に依存している点や、観察研究であるため因果関係を確立していない点などが挙げられます。

研究者たちは、今後の研究では実験デザインを取り入れることで、これらの観測結果の因果関係を明らかにし、身体活動がどのようにして社会的孤立の影響を軽減するのかをさらに探求したいと考えています。

確かに、自分自身のことを振り返ってみても、月間のランニングの走行距離が200Kmを超えた月もありました。

今から考えてみれば、鬱々とした気分を何とか晴らしたいと思っていた結果なのでしょう。

 

元論文:

Benedyk, A., Reichert, M., Giurgiu, M. et al. Real-life behavioral and neural circuit markers of physical activity as a compensatory mechanism for social isolation. Nat. Mental Health 2, 337–342 (2024). https://doi.org/10.1038/s44220-024-00204-6