今日は慢性腎臓病(CKD)患者におけるビタミン補給についての研究成果を紹介したいと思います。
多くの人がビタミンと聞くと、健康のための万能薬を思い浮かべるかもしれません。
しかし、CKD患者におけるビタミン補給の効果と安全性に関する最新の研究成果は、一概にそうとは言い切れないことを示しています。
もちろん、CKD患者におけるビタミンの重要性は誰もが認めるところです。
私たちの体は、様々な体系や機能を維持するためにビタミンを必要としています。
そして、CKD患者は特にビタミン不足になりやすいという課題を抱えています。
食欲不振、不十分な食事摂取、プロテインエネルギーの消耗、厳格な食事制限、透析によるビタミンの消失、そして十分な日光によるビタミンDの不足など、多くの要因がビタミン不足を引き起こします。
しかし、この患者群におけるビタミン不足の臨床症状は、通常は軽微なものであり、見過ごされてしまいがちです。
なぜなら、多くのビタミンの血中濃度は、葉酸、ビタミンB12、25-ヒドロキシビタミンDを除いて、検査されないのが現状だからです。
理由としては、一般の検査室レベルの検査でなかったり、高価であったり、血中濃度が体内の分布と相関しないこともあるからです。
重要なのは、これまでのところ、ビタミン補充が腎臓、心血管、または患者に有益であることを支持する無作為化試験が実施されていないという点です。
つまり、水溶性ビタミンの補充を検討する際は、患者の食事摂取量、栄養状態、ビタミン不足のリスクを考慮して、個々に決定する必要があります。
特に、CKD患者においては、ビタミンAの補充は推奨されていません。
これは、CKD患者ではビタミンAが通常上昇しており、低用量であっても毒性を引き起こす可能性があるためです。
一方で、ビタミンB1(チアミン)やビタミンB6(ピリドキシン)の不足は、CKD患者に特有の症状と関連している可能性が示されています。
さらに、一般的な人口における系統的レビューは、マルチビタミン、ビタミンD、カルシウム、ビタミンCの摂取が、メリットにもデメリットにもならないことを示しています。
また、ビタミンの補給については、天然の食品源から摂取することが推奨されています。
健康的な食事パターンを通じて様々な栄養食品を摂ることで、CKD患者も必要なビタミンを得ることができます。
これは、ビタミン補給剤に頼るよりも、遥かに自然で健康的なアプローチと言えます。
結論として、CKD患者におけるビタミン補給に関する最新の研究は、一般的なルーチンとしてのビタミンサプリを支持していません。
それよりも、個々の患者の状況を考慮して、適切な判断を下すことが重要です。
栄養価の高い食品を含む健康的な食事パターンを心がけることが、CKD患者のビタミン不足を防ぐ上での鍵となります。
元論文:
Wang AY, Elsurer Afsar R, Sussman-Dabach EJ, White JA, MacLaughlin H, Ikizler TA. Vitamin Supplement Use in Patients With CKD: Worth the Pill Burden?. Am J Kidney Dis. 2024;83(3):370-385. doi:10.1053/j.ajkd.2023.09.005