「引き寄せ」を正しく理解する

 

「引き寄せの法則」という言葉は、普通に日常会話の中でつかわれたりしますから、すでに市民権を得た言葉とも言えます。

私もどちらかというと、そういうタイプの話は好きです。

この法則は、願えば宇宙が応えてくれるという、何とも魅力的な考え方です。

しかし、実際のところ、この理論の根底にあるのは、心の持ちようが現実を創造するという古くからある考え方の「現代版」に過ぎないのですね。

「念ずれば岩をも通す」とか「笑う門には福来る」、そうそう、「自業自得」なども同義語になるでしょう。

「引き寄せの法則」を代表する作品「ザ・シークレット」は、オーストラリアのテレビプロデューサー、ロンダ・バーンによって生み出されました。

この本は世界中で3500万部以上売れ、多くの人々に影響を与えました。

しかし、この理論が提唱する内容は、「ポジティブ思考」を説くものであり、科学的な根拠に欠ける部分が多々あります。

ポジティブ思考が良い結果をもたらす可能性は心理学研究でも示されていますが、それが全てではありません。

実際には、成功に不可欠なのは、努力やスキル、能力といった他の要素が含まれます。

例えば、学校の授業で良い成績を取りたいと思ったら、ポジティブ思考だけではなく、当然ですが勉強する必要があります。

また、「引き寄せの法則」は、悪いことが起こるのはネガティブに考える人のせいだとする傾向があります。

これは、問題を抱える人々を責めるような危険な思考につながる恐れがあります。

たとえば、長くうつ症状に苦しむ人々にとっては、単にポジティブに考えることが難しいことがあります。

「引き寄せの法則」の魅力は、なんといっても人生をよりコントロールできるという希望を提供する点にあります。

しかし、実際には人生や現実は、単に思考すること以上に複雑であるということを理解することが重要です。

科学的方法を用いて情報を批判的に考察することが、このような理論に対処する際には必要になります。

人間の心理や行動に関する研究は、ポジティブな態度が良い結果をもたらすことを支持していますが、それは宇宙との神秘的な繋がりによるものではなく、あくまでも具体的な行動や努力の結果です。

心が求めるものを手に入れるためには、ポジティブ思考に加えて、大切なのは目標に向かって一歩一歩進むことですね。

最終的に、私たちは誰もが自らの手で現実を形作る力を少なからず持っているものです。

けれども、夢を現実に変えるためには、希望と同じくらいの汗と努力が必要です。

そして、最も価値があるのは、その過程で得られる学びや成長なのだと思います。