自撮りの心理

 

ランニングで遠くまで出向いたとき、スマホで「現場」撮影をします。

それから、背景がちゃんと写るように自分の顔を撮って、家族や友人たちと共有します。

いわゆる「自撮り」です。

私の場合は、「こんなところまで来ちゃったゼィ!」というアピールしかないのですが、イタイおじさんの話ではなくて、若者の自撮り文化についての研究は、心理学的に重要かも知れません。

中国の女子中高生を対象に行われた、こんな研究があります。

自撮りの頻度や、自分の見た目を他人と比べること、自分の身体にどれだけ注意を払っているかなど、いくつかの質問をしました。

結果からわかったのは、自分が他人と比べて魅力的だと思うほど、自分の見た目に敏感になり、それが自撮りをよく投稿する行動につながっているということでした。

しかし、これは単なる「ナルシシズム」からの行動ではないようです。

この「比較→自己監視→自撮り投稿」というサイクルに陥りやすかったのが、自尊心が低い人なのでした。

自分に自信がないと、他人との比較から自分を監視することが多くなり、それがまた自撮り投稿へとつながっているようです。

ただし、この研究には限界もあります。

例えば、これらの結果は、ある時点での関連性を示しているだけで、必ずしも「自撮りが原因で自尊心が低下する」とは言えません。

また、中国の女子中高生だけを対象にしているため、他の国や文化で同じ結果が得られるかはわかりません。

けれども、この研究は重要なポイントを教えてくれます。

それは、自撮りという行為が、ただの楽しい時間の過ごし方以上の意味を持ち得るということ。

そして、自分自身をどう見るか、他人と自分をどう比較するかが、私たちの心に大きな影響を与える可能性があるということです。

次に自撮りをするときには、ちょっと立ち止まって考えてしまうかも知れませんね。

私はイタイおじさんのままですが、ソーシャルメディアにどっぷり浸かっている若者は、いろいろと大変だなあと思ってしまいました。

 

元論文:

Lyu Z, Zheng P, Kou D. Social Comparison and Female Adolescents’ Selfie Behaviors: Body Surveillance as the Mediator and Self-Esteem as the Moderator. Psychol Rep. Published online March 6, 2023. doi:10.1177/00332941231162006