若者の孤独感への対応策

 

誰もが「孤独」を感じる時があります。

そして、私のような昭和の人間は「孤独をどうこうするのはその人次第」という態度をとりがちなのも事実です。

もちろん、そういう認識でいること自体が、浅薄です。

近年の研究によると、「孤独感」は特に10代後半から20代の若者たちにとって、全体の約40%にものぼると言われています。

これは、ただの一時的な感情ではなく、精神的、身体的健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、公衆衛生上の優先事項となっています。

孤独は、うつ病や不安、自殺念慮のリスクを高めると広く知られています。

しかし、この感情を軽減するための介入は、これまで主に高齢者を対象に行われてきました。

そこで、マサチューセッツ総合病院の研究チームが、若者を対象とした新しいアプローチを試みました。

それが「レジリエンストレーニング(RT)」と呼ばれるプログラムです。

このプログラムは、自己評価の低さや社会的拒絶への敏感さといった、孤独と関連する問題に焦点を当てています。

RTは、感情調整、自己認識、社会的相互作用の改善を目指し、マインドフルネス、自己共感、メンタライゼーションといったエビデンスに基づくスキルを教える4回のセッションから構成されています。

このプログラムの効果を検証するためのランダム化比較試験では、RTが参加者のレジリエンス関連能力を向上させました。

そして、精神病理学的症状を減少させることが確認されました。

二次分析によると、RTが孤独感の減少にも効果があることが示されました。

具体的には、RTを受けたグループは、待機リストにあったグループに比べると、孤独感が顕著に減少しました。

これは、レジリエンス、マインドフルネス、自己共感の増加が孤独感の減少と有意に関連していることからも裏付けられています。

しかし、この研究はいくつかの限界も持っています。

今まさに問題を抱えている対照群を用意できなかったことや、長期的な効果を評価するためのフォローアップ評価が行われていない点などです。

ただし、この研究はひとつの突破口になる可能性があります。

孤独という闇に包まれた時、私たちは自分自身をより良く理解し、感情を管理する方法を学ぶことで、その闇を少しでも明るくすることができるわけです。

自分自身や周りの人が孤独を感じた時、それに対峙する方法はいくつかあります。

自己共感を育む、マインドフルネスを実践する、そして何よりも、私たちは一人ではないということを思い出すこと。

「思い出す」ことができるかどうかが、大きな鍵にはなりますね。

 

元論文:

DeTore NR, Burke A, Nyer M, Holt DJ. A Brief Resilience-Enhancing Intervention and Loneliness in At-Risk Young Adults: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2024;7(2):e2354728. Published 2024 Feb 5. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.54728