ウェアラブルデジタルヘルステクノロジーについて

 

1月25日付のアメリカの医学専門誌「New England Journal of Medicine」に、循環器領域におけるウェアラブルデジタルヘルステクノロジーについてのレビュー記事が載っていました。

元論文:

Spatz ES, Ginsburg GS, Rumsfeld JS, Turakhia MP. Wearable Digital Health Technologies for Monitoring in Cardiovascular Medicine. N Engl J Med. 2024 Jan 25;390(4):346-356. doi: 10.1056/NEJMra2301903. PMID: 38265646.

 

ウェアラブルデジタルヘルステクノロジーとは、スマートウォッチや指輪などのように身に着けてモニタリングするものです。

現代医療における重要な進歩の一つで、この技術は、多くの患者や医療従事者に利益をもたらしています。

例えば、こんな利点があります。

1. リアルタイムモニタリング:持続的な健康状態のモニタリングを可能にし、異常があれば速やかに警告します。例えば、心拍数や血糖値の変化を検知し、必要に応じて医療介入を行うことができます。

2. アクセスと公平性の向上:遠隔地や資源が限られた地域の人々にも高品質な医療ケアを提供することが可能です。地理的な格差を小さくし、多くの人々が適切なケアにアクセスできるようになります。

3. 患者の自己管理能力の強化:患者自身が自分の健康状態をモニタリングし、より積極的に健康管理を行うことができます。

やはり、欠点を知っていなければなりません。

1. プライバシーとセキュリティの問題:個人の健康データが外部に漏れるリスクがあります。これらのデータの取り扱いには適切なセキュリティ対策が必要です。

2. データの解釈と正確性: データの解釈には専門知識が必要であり、誤解釈のリスクがあります。また、デバイスの精度や信頼性にも依存します。

3. コストとアクセシビリティ: 高品質のデバイスはコストがかかるため、すべての人々がこれらの技術を利用できるわけではありません。

さらに加えて、日常診療で私が思うのは、主に心理面においての欠点です。

1. 神経質との関連: ウェアラブルデバイスを使用する人が自分自身の健康状態に集中しすぎて、結果として神経質に不安を感じるようなことが起こっています。特に、心拍数や睡眠パターンなどの日々のバイタルデータを常にモニタリングして、些細な変動にも過敏に反応します。

2. データの解釈に関する問題:実は、ウェアラブルデバイスから提供されるデータの解釈は思っているよりも困難です。そのため、誤った解釈が健康不安を引き起こす可能性があります。たとえば、正常範囲内の生理的変化を病気の兆候だと誤解したりします。

3. 依存と心理的ストレス: いくつかの研究は、ウェアラブルテクノロジーへの依存が、不安やストレスの原因となりうることを示しています。この依存は、健康に対する過剰な懸念や、テクノロジー無しでは自身の健康状態を管理できないという感覚を生むことがあります。

これらのことを考慮すると、ウェアラブルデジタルヘルステクノロジーは多くの利点をもたらす一方で、その使用は適切なガイダンスと教育が伴う必要があると言えます。

特に、データの正しい解釈や、技術に過度に依存しない健康管理の重要性を理解することが、このテクノロジーの健康的な利用において重要です。

ですから、優しさのつもりで親にプレゼントしたスマートウォッチが、かえって心理面の健康を害することがあることを、頭に入れておいてください。

のんびりと過ごしていた方がいいことも、たくさんあります。