人差し指と薬指の長さの不思議

 

人間の身体は、内面を映し出す鏡のようだと言われることがあります。

手相や人相占いなどは、その代表のようなものですね。

ほかにも、例えば、ネットの広告などで「指の長さでわかる〇〇」という文字を見たことがあります。

そのほとんどがブログやニュースなどの記事の途中に挟まっているものなので、そのままスルーしているのですが、結構よく見ます。

あれは、人差し指と薬指の長さを比べて、どちらかが長かったり短かったりしたら、あなたの〇〇がわかるというような感じの内容だったと思います。

実は、以前から、人差し指(2D)と薬指(4D)の長さの比率、一般に2D:4D比率として知られるものが、さまざまな行動や性格特性の指標である可能性が示されていたのですね。

実は、花びら占いのようにほとんど根拠がないわけではないものなんです。

この比率は、胎児が子宮内でさらされるテストステロンとエストロゲンのレベルに影響されると考えられています。

テストステロンがエストロゲンに対して高いほど、2D:4D比率は低くなり、一般的に薬指が人差し指に比べて長くなります。

研究者たちはこの指の長さの比率が特定の精神障害や性格特性とどのように相関するかを深く理解することを目指しました。

それが、今日紹介する論文の内容です。

研究の主な焦点は、アンフェタミン使用障害(AUD)、反社会性人格障害(ASPD)、両方を持つ個体(AUD + ASPD)、および健康な個体のコントロールグループに診断された個体でした。

ここで言うアンフェタミン使用障害(AUD)とは、アンフェタミンの過剰使用や依存性に関連する問題です。

アンフェタミンは、中枢神経系(CNS)の興奮剤で、ADHDや睡眠障害の治療に使用されますが、誤用すると様々な副作用や健康被害が起こります。

さて、研究者たちは、研究のために80人の参加者を募集しました。

これらは、臨床診断を受けた44人の個体(AUD 25人、ASPD 10人、両方を持つ9人)と、36人の健康なコントロールからなる2つの主要なグループに分けられました。

参加者は研究の目的と目標について十分に情報を提供され、機密性が保証されました。

同意を得た後、参加者は詳細な社会人口統計情報を提供し、心理的評価を受けました。

さらに、右手のひらのスキャンが行われ、人差し指と薬指の長さが正確に測定されました。

その結果、臨床群の参加者は健康なコントロール群に比べて、顕著に低い2D:4D比率を示しました。

これは、AUD、ASPD、特に両方の状態を持つ人々は、人差し指に比べて薬指が長い傾向があることを示していました。

さらに、この研究では、低い2D:4D比率が、ダークトライアド特性(マキャベリズム、ナルシシズム、サイコパシーの組み合わせ)の高いスコアと関連していることが見出されました。

これは、出生前のホルモン暴露がこれらの社会的に不快な特性と関連している可能性を示しています。

しかし、脆弱なナルシシズムや不確実性への耐性の測定と2D:4D比率の間には有意な相関は見られませんでした。

この研究の結果は、2D:4D比率という単純な身体的測定が、特定の性格特性や脆弱性を予測するための非侵襲的バイオマーカーとして使用される可能性を示しています。

ただし、この研究にはいくつかの限界があります。

サンプルサイズが比較的小さく、一つの精神医療施設の参加者に限定されているため、結果の一般化には制限があります。

また、健康なコントロール群からの包括的な心理学的データが欠けているため、臨床群と非臨床群の比較が完全ではありません。

この研究は、出生前の環境が、成人期の行動や性格に長期的な影響を与える可能性があることを示しています。

しかし、これらの発見が個々の行動や性格を完全に説明するものではなく、多くの要因が複雑に絡み合っていることを忘れてはなりません。

 

元論文はこちら:

Hashemian SS, Golshani S, Firoozabadi K, Firoozabadi A, Fichter C, Dürsteler KM, Brühl AB, Khazaie H, Brand S. 2D:4D-ratios among individuals with amphetamine use disorder, antisocial personality disorder and with both amphetamine use disorder and antisocial personality disorder. J Psychiatr Res. 2023 Dec 11;170:81-89. doi: 10.1016/j.jpsychires.2023.12.004. Epub ahead of print. PMID: 38113678.