酒飲み用語としての「アルコール消毒」の真偽

お酒が好きな方々の間では、「アルコール消毒」という表現はよく使われますね。

これは「お酒を飲んで体内の病原体を消毒してしまおう」というユーモラスなたとえですが、このジョークを「根拠なし」と決めつけるのは早計のようです。

(もっとも、言っている本人も真面目に訴えているワケではないと思うのですが 笑)

 

元論文はこちら→

Tatsuomi Matsuoka, Kou Matsuoka, et al. A gastric acid condition enhances the microbial killing effect of ethanol. Microbiology Research International.Volume 9, Issue 2:P40-45

 

この研究は、人間の胃酸の条件下でエタノールが微生物に対してどのように作用するかを調査しました。

特に、土壌性原生動物コルポダ・ククルスの休眠嚢胞と、病原性細菌であるクレブシエラ・ニューモニアなどに注目しています。

胃酸は、pH 1~3の範囲で、非常に強い酸性を示します。

この酸性環境は、多くの微生物にとっては生存困難な条件を作り出します。

しかし、一部の微生物は、酸性条件に耐えうる能力を持っています。

そこで、研究者たちは、エタノールがこれらの酸耐性微生物にどのような影響を与えるかを調べました。

結果として、胃酸の低pH状態において、エタノールの濃度が20%以下であっても、微生物に対して有効な殺菌効果があることがわかりました。

つまり、食事時にアルコールを摂取することが、これらの病原体に対する防御手段となり得るというわけです。

しかし、ここでマジメにコメントしなくてはいけませんね。

もちろん、これを「アルコール消毒」と同一視することは危険です。

まず、アルコール消毒は通常、高濃度のエタノールを使用し、外部からの病原体を直接除去するものです。

一方で、飲酒による効果は、内部の微生物に対して限定的に作用します。

さらに、アルコールの過剰摂取は多くの健康リスクを伴います。

そのため、飲酒は適量に留め、健康的な生活習慣を維持することが重要です。

結局のところ、「アルコール消毒」という表現は、飲み会を開く景気づけだけにとどめておくべきで、その科学的根拠は限定的です。

健康を守るためには、飲酒による利点とリスクを十分理解し、バランス良く摂取することが肝心だということです。