猫の行動学:フェッチングの研究

ペットを飼っている人にとっては、ごく普通にやっている遊びがありますね。

英語では「fetching」と言うものです。

「fetching(フェッチング)」というのは、飼い主が投げたものをペットが取ってきて、飼い主の手元に戻す一連の行為を指します。

そう説明すると、あなたが思い描くのは、飼い主が投げたボールを、ちぎれんばかりにしっぽをふる犬が、すごいスピードで駆け出して、飼い主の元にボールを戻すシーンでしょうね。

フェッチングは相互に絆を深める遊びとして、特に若い犬に頻繁に見られます。

また、犬の中には訓練可能性が高い種が存在し、特定の品種はフェッチングに特に適しているとされています。

例えば、狩猟犬などがそうなのでしょうね。

では、猫の場合はどうなのでしょう?

そんな疑問にひとつの答えを示してくれる研究があります。

 

元論文はこちら→

Forman J, Renner E, Leavens DA. Fetching felines: a survey of cat owners on the diversity of cat (Felis catus) fetching behaviour. Sci Rep. 2023;13(1):20456. Published 2023 Dec 14. doi:10.1038/s41598-023-47409-w

 

猫の場合、フェッチングの定義には幾分独自の側面があります。

この研究では、「フェッチング」は、猫がオブジェクトを追いかけ、それを拾い上げて、元の場所や飼い主のもとに戻す行動と定義されています。

この定義は、犬のフェッチングとは若干異なります。

犬の場合、フェッチングは一般に訓練された行動と見なされ、飼い主がオブジェクトを投げた後、犬がそれを取って戻すという一連の行動が含まれます。

犬は、この過程で飼い主の指示や合図に応じるのです。

猫のフェッチングに関するこの調査研究は、世界中の924人の猫の飼い主による1154匹の猫のデータを基にしました。

研究者たちは、特に猫が初めてフェッチングを示した時を中心に、様々な質問を通じて情報を収集しました。

その結果、ほとんどの猫(94.4%)が特別な訓練なしにフェッチングを始め、この行動は主に1歳未満(701匹)または1~7歳(415匹)の時に最初に認識されました。

猫は飼い主よりもフェッチングの開始や終了を決定する主導権を握っていることが示されています。

つまり、フェッチングをするのも、やめるのも、猫の気分次第…ということですね。

犬の場合と同様に、猫のフェッチングはストレスの軽減や運動能力の向上に寄与する可能性があります。

ただし、猫のフェッチングは犬とは異なり、自然に発生することが多く、猫の本能的な行動に基づいていると考えられています。

調査に参加した飼い主の中で、女性が64.8%、男性が23.1%、ノンバイナリーが9.4%を占めており、さまざまな地域からのデータが含まれていました。

また、猫の種類は多様で、純血種とミックスブリードが混在していました。

猫が好んでフェッチングするオブジェクトは多岐にわたっていて、猫用のおもちゃだけでなく、くしゃくしゃにした紙や化粧品など、家庭内で見つけられる物ならなんでも良いようです。

猫のフェッチ行動は個々の猫によって大きく異なっていて、特定の状況下でのみフェッチを行う猫もいれば、積極的に何度もフェッチングを繰り返す猫もいました。

この研究の結論として、猫のフェッチングは猫の性別や品種、住む場所によって限定されるものではなく、大多数の猫が訓練を受けずにこの行動を始めていることが明らかになりました。

猫のフェッチングに関するこの研究では、猫が人間との関係でより主導権を握っていることが示されました(笑)。