腸と脳の対話:腸脳力を高めるグリア・ハブ細胞

私たちの体には、無数の神経細胞があります。

これらは、ほとんどが脳や脊髄といった中枢神経系に集中しています。

しかし、最近はよく耳にするかも知れませんが、私たちの腸にも自分自身の「脳」があります。

そう、腸管神経系です。

この神経系は、私たちの消化を司るだけでなく、感情や健康にも大きな影響を及ぼします。

今日は、この腸管神経系のグリア・ハブ細胞についてのお話です。

 

元論文はこちら→

Scavuzzo MA, Letai KC, Maeno-Hikichi Y, et al. Enteric glial hub cells coordinate intestinal motility. Preprint. bioRxiv. 2023;2023.06.07.544052. Published 2023 Jun 9. doi:10.1101/2023.06.07.544052

 

この研究で、腸管神経系のグリア・ハブ細胞が注目されています。

これまであまり知られていなかったこの細胞は、腸の運動をコントロールする重要な役割を担っていることが明らかになりました。

私たちの腸は、食べ物を消化し、栄養素を吸収し、残り物を排出するという複雑な作業をこなしていますが、この細胞がその指揮者の一人であるわけです。

このハブ細胞の特徴的な点は、PIEZO2という特別なイオンチャネルを持っていることです。

このチャネルは、腸の運動を感知し、調節するセンサーの役割を果たします。

つまり、腸が「今、食べ物を押し出す時だ」とか「ちょっと休憩しよう」といった判断をする際に、このハブ細胞がキープレーヤーなのです。

実験では、PIEZO2を欠くマウスでは腸の動きに問題が生じることが観察されました。

これは、腸の健康におけるグリア・ハブ細胞の役割が非常に大きいことを示唆しています。

また、この発見は、便秘や過敏性腸症候群といった胃腸疾患の治療に新たな扉を開く可能性を秘めています。

腸が健康であれば、私たちの体も心も健康です。

今回の研究は、腸の神秘を解明する一歩として、大きな意味を持ちます。