パンデミックの「終わり」は?

 

2023年5月、アメリカのジョー・バイデン大統領が新型コロナウイルスに関する国内非常事態を解除しました。

これは多くの人々にとって「終わり」を象徴する瞬間かも知れません。

しかし、パンデミックやその他の大規模な疾病が「終わる」とは、一体どういうことを言うのでしょうか?

 

元論文はこちら→

Do Pandemics Ever End?

J.M. Abi-Rached and A.M. Brandt10.1056/NEJMp2306631

 

CDC(アメリカ疾病対策センター)の統計によると、新型コロナウイルスの新規感染者数はピーク時の1日あたり10万人以上から、現在は1万人未満に減少しています。

数字だけを見て安堵するのは早計です。

なぜなら、これが「終わり」を意味するわけではないからです。

実際、1940年代に消失したとされるペストが今も地域社会で見られるように、疾病が消えることは稀です。

量子論が観測によって物事の状態を定義するように、感染症の「終わり」もまた、科学的なデータと人々の認識によって異なるものとされています。

疾病が医学的に「コントロール」されているかどうかは一面の事実で、それと同時に、社会がどれだけのリスクを「許容」するかもまた重要な要素となります。

税制のように皆が納得する形で「契約」を結ぶ必要があります。

この「社会契約」の基盤が不安定だと、科学がいくら進歩しても疾病は「終わらない」のです。

例えば、ワクチンが普及しても、その安全性に対する不信感が広がれば、終息は遠のく一方です。

そして、新しい事実や認識が現れても、古い考え方がすぐに取って代わられるわけではありません。

疾病が「終わる」かどうかは、実は我々一人一人がどれだけその事実を受け入れ、適応するかにかかっているのかもしれません。

それは科学だけではなく、人々の感情や文化、そして社会全体での合意にも影響されることです。