この研究は、香港大学の助教授、Satoshi Araki氏によって行われました。
目的は、社会的条件が幸福にどのように影響するのか、そしてその影響が所得層によってどのように変わるのかを探ることです。
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Araki, S. (2023). The Societal Determinants of Happiness and Unhappiness: Evidence From 152 Countries Over 15 Years. Social Psychological and Personality Science, 0(0). https://doi.org/10.1177/19485506231197803
研究には152か国からのデータが15年間にわたって収集され、そのデータにはGDP(一人当たり国内総生産)、社会的支援、健康寿命、選択の自由、寛大さ、腐敗の認識、そして幸福と不幸に関するいくつかの指標が含まれています。
興味深いのは、経済成長(GDP)と生活満足度との関係が必ずしも強くないという点です。
むしろ、「寛大さ」、「社会的支援」、「個人の自由」といった非経済的要素が、幸福に大きな影響を与えていることが明らかにされています。
特に富裕な国で顕著なのが「寛大さ」の要素でした。
この研究では、寛大さが高い国では人々の幸福度も高いという結果が出ています。
また、所得に関わらず「社会的支援」がしっかりとあるところでは、ストレスが少なく、心の健康状態が良いというデータも示されています。
「個人の自由」というのは、自分自身で選択できる余地がどれだけあるか、ということですね。
選挙で自分の意見を表現できる自由、好きな職業につける自由などがそれに当たります。
これもまた、幸福感に寄与する要素とされています。
このような社会的要素が、実は我々の心の中で大きな役割を果たしています。
もちろん、研究には限界もあり、個々の体験をすべて説明するわけではありませんが、社会全体として幸福を高めるための方向性を示しています。
この研究が示しているのは、単に「幸福」ではなく、「不幸」を減らす社会をどう作るか、という視点かも知れません。