日常診療としてもベーシックなお話なのですが、興味深く実は奥が深いんじゃないかと思われる内容の報告が目に留まりました。
「横になっている時の血圧測定が、座っている時の測定よりも心血管リスクに関する多くの情報が得られるかも知れない」というものです。
この研究は、ハーバード医科大学の4年生であるDuc M. Giao氏によって行われました。
2023年9月9日に発表された「高血圧科学セッション(HYP)2023」の抄録452で提示されています。
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High blood pressure while lying down linked to higher risk of heart health complications
American Heart Association Hypertension Scientific Sessions – Abstract 452
Giao氏は、長期間にわたる「動脈硬化リスクコミュニティ(ARIC)」研究からのデータを分析し、横たわっている間に高血圧を持つ人々が、座っている間に高血圧を持つ人々とは独立して心血管疾患(CVD)のリスクが高まることを示唆しました。
この研究は、1987年から1989年の間に行われたARIC訪問1で、11,369名の成人(平均年齢54歳、女性が56%、黒人が25%)の健康データをレビューしました。
この参加者たちは、開始時点で冠動脈心疾患、心不全、または脳卒中の既往はありませんでした。
データは、座っている間に高血圧がない人の16%が、横たわっている間に高血圧を持っていたことを示していました。
一方、座っている間に高血圧を持つ人の74%が、横たわっている間に高血圧を持っていました。
中央値25~28年のフォローアップ期間中、横たわっている間の高血圧は、冠動脈心疾患、心不全、脳卒中、致命的な冠動脈心疾患、および全因死亡率の増加リスクと関連していました。
Giao氏は、心疾患と脳卒中の既知のリスク因子を持つ人々が、背中を平らにして横たわっている間に血圧を測定することで、治療介入の機会が期待できるものと提案しています。
しかし、この研究にはいくつかの制約があります。
テキサス州ダラスのUTサウスウェスタン医療センターの教授であり、高血圧セクションの循環器部門のディレクターであるWanpen Vongpatanasin博士は、「多忙な診療現場では、座っているときと横たわっているとき、立っているときの両方で血圧を測定することは不可能だ」と指摘しています。
また、この研究は、夜間の血圧測定の重要性を強調していることにもなります。
つまり、夜間はほぼ全員が横になっていますから。
この研究は、医療者が患者の血圧を測定する方法を再評価するきっかけとなるかもしれません。
そして、これが心血管疾患のリスク評価と管理における新しい標準を確立する第一歩となるかもしれませんね。