「機能性ディスペプシア」にスパイス?

 

「機能性ディスペプシア」という疾患があります。

 

説明すると、「器質的疾患がないのにもかかわらず上腹部症状を慢性的に訴える症候群である。機能性ディスペプシアの症状はRome IV基準では、つらいと感じる4つの症状(食後の上腹部膨満感、食事早期の満腹感、心窩部痛、心窩部灼熱感)に大別される。前2者の場合を食後愁訴症候群:週に3日以上の症状がある場合とし、後2者の場合を心窩部痛症候群:週に1日以上の症状がある場合と定義している。」(今日の臨床サポートより抜粋)

 

簡単に言えば、機能性ディスペプシアは、多くの人々が日常的に経験する、胃の不快感や消化不良の症状群です。

この症状は、食事の質や量、ストレスなどさまざまな要因によって引き起こされることがあります。

しかし、今回の研究は、この症状を緩和するための新しいアプローチを試みていました。

 

元論文はこちら→

Kongkam P, Khongkha W, Lopimpisuth C, et al Curcumin and proton pump inhibitors for functional dyspepsia: a randomised, double blind controlled trial BMJ Evidence-Based Medicine Published Online First: 11 September 2023.

https://ebm.bmj.com/content/early/2023/07/26/bmjebm-2022-112231

 

研究者たちは、クルクミンという成分とオメプラゾールという薬を用いた治療法を試しました。

クルクミンは、ウコンの根に含まれる成分で、抗炎症作用や抗酸化作用があるとされている成分です。

一方、オメプラゾールは、胃酸の分泌を抑える薬として広く知られていますし、医療現場でよく使われる薬です。

この研究では、患者を3つのグループに分け、それぞれにクルクミン単独、オメプラゾール単独、または両方の組み合わせを28日間投与しました。

そして、28日目と56日目に、患者のディスペプシアの症状の重症度を評価しました。

結果は、どのグループも、治療開始から28日目と56日目に、痛みや非痛みの症状、そして満足度の向上が見られました。

ただし、クルクミンとオメプラゾールの併用は、それぞれ単独で使用した場合と比べて、相乗効果を示すことはありませんでした。

この結果は、機能性ディスペプシアの治療で、クルクミンとオメプラゾールが同等の効果を示すことを示唆しています。

アーユルヴェーダ医学などでは古くからクルクミンなど多くのターメリックを活用してきましたから、目新しいことではありませんが、明確なデータが示されることは良いことです。

この研究は、胃の不快感や消化不良といった、日常的な症状に悩む多くの人々にとって、一つの選択肢として朗報となることでしょう。

胃の調子が悪くて食欲はないけれども、スープカレーなら食べられそう…と言っていたのは、理屈に合っていたのですね。