臓器移植の分野は、その進歩が人々の命を救う可能性を秘めています。
アラバマ大学バーミングハム校の研究では、10種類の遺伝子が編集された豚からの腎臓が、脳死が確認された50代の男性に移植されました。
元論文はこちら→Normal Graft Function After Pig-to-Human Kidney Xenotransplant
https://jamanetwork.com/journals/jamasurgery/fullarticle/2808483
一方、ニューヨーク大学ランゴン移植研究所では、一つの遺伝子修正と、豚の胸腺腺を移植することで、腎臓の拒絶反応を防ぐ方法が開発されました。この腎臓は、32日間人体で正常に機能しているのだそうです。
元論文はこちら→Pig Kidney Xenotransplantation Performing Optimally After 32 Days in Human Body
このような研究が進むと、臓器不足という深刻な問題に一石を投じることになり、多くの人々に新たな希望がもたらされる可能性があります。
しかし、課題が多いのも事実です。
まず、社会的・倫理的問題が先行します。
動物の権利、遺伝子編集の倫理、そして移植手続きのコストなど、多くの側面で慎重な議論が必要です。
また、異種移植が成功した場合の長期的な影響や、拒絶反応のリスクもまだ完全には解明されていません。
異種移植がこれまで一般的でなかった理由はいくつかあります。
主な障害としては、人体が異種の臓器を拒絶するリスクです。
これは、人と豚の遺伝的な違いに起因するものです。
また、遺伝子編集技術の未熟さも大きな要因でした。
しかし、最近の遺伝子編集技術の進展と、拒絶反応を抑制する新しい方法の開発によって、この障害が次第に解消されつつあるのです。
医療は確実に進化しています。
その進化が人々の生活をどれだけ豊かにできるかは、これからの研究で明らかにされるものです。