「カフェインの科学: なぜ私たちは覚醒し、元気になるのか」TEDEdから

 

毎年、世界中で年間約10万トンのカフェインが摂取されているそうです。

このカフェインのほとんどはコーヒーやお茶で摂取され、ソーダやチョコレート、カフェイン入りのサプリ、そしてカフェインを含まないと表示される飲み物(デカフェとか!)でも摂取されます。

実際、カフェインは世界で最も広く使用されている「薬物」です。

カフェインは、睡眠不足の眠気覚ましに利用しますし、集中力の向上を期待して口にします。

自称「コーヒー中毒」の人種にいたっては、その一杯で幸福感に浸りますし、それなしでは一日中体の不調を訴えつづけることになります。

つまり、カフェインは、中枢神経系の刺激剤として作用します。

カフェインが刺激剤として働くのは、神経の抑制プロセスを抑制(つまり「促進」)させるからです。

まず、私たちの体は、クエン酸回路(TCA回路)によってATPを分解することでエネルギーを獲得しています。

この過程で、ATPの化学的なバックボーンであるアデノシンが放出されます。

そして、脳の神経細胞は、アデノシンと結合する受容体を持っています。

アデノシンがこれらの受容体に結合すると、神経細胞で脳シグナル分子の放出が遅くなるように生化学反応の連鎖が起きます。言い換えると、神経細胞の活動が鈍くなるのです。

つまり、眠くなります。

エネルギー獲得時に放出された物質が、スイッチを切る役目を担っているのですから、ちゃんとオーバーヒートを防ぐシステムが確立しているのですね。

カフェインは、アデノシン受容体をブロックすることで、神経活動を鈍くさせるプロセスを妨害します。つまり、眠気をもたらすアデノシンをブロックすることで、私たちを起きている状態に保つのです。

ほかにも、カフェインは、ポジティブな感情を高めることもあります。

一部の神経細胞では、アデノシン受容体がもう一つの分子であるドーパミンの受容体と結びついています。

ドーパミンは、脳で快感を促す役割の一つです。

アデノシンがこの受容体に結合すると、ドーパミンが自身のスポットに適合するのが難しくなり、気分を高揚させる効果が損なわれます。ここでも、アデノシンは休息をとるようにと働いているのですね。

しかし、カフェインがアデノシンの場所に立つと、ドーパミンが適切に結合することができます。

そのため、カフェインによってドーパミンを介してポジティブ感情が起きるわけです。

さらに、カフェインは体内の脂肪燃焼能力を高めることもできます。

もちろん、カフェインの効果がすべて有益なものというわけではありません。

カフェインは、心拍数や血圧を上げたり、尿の回数が増えたり、お腹の具合を悪くさせることがあります。また、不眠や不安については、よく言われていることですね。

さらに、カフェインが含まれる食品や飲み物は、それぞれが体に与える影響も考慮する必要があります。

また、「耐性」の問題もあります。

カフェインを常習的に摂取して、アデノシン受容体が常に塞がっている状態が続くと、体は余分な受容体を作り出してしまうのです。

そのため、同じ量のカフェインを摂取しても、同じ効果が感じられなくなります。

ですから、カフェインによる満足感を得るために、ますます多くのカフェインを摂取することになりますし、そういう状態でカフェインを急にやめると、不快な離脱症状を経験するかもしれません。

この離脱症状は、受容体がたくさんある状態のため、アデノシンが過剰に働くので、頭痛や疲労、気分の沈みを引き起こしてしまうのです。

でも、ここでちょっと我慢してみてください。

数日で余分なアデノシン受容体は消え去るはずです。体の調整機能が働いて、カフェインなしの生活でも快適に過ごせるはずです。