心の仕組み: 感情を理解し、制御する

 

「感情」について語るとき、一般的に誤解されていることがあります。

例えば、「感情は生まれながらに脳に固定されているもの」とか「脳が反応的に生み出すもの」と考えられているかも知れません。

しかし、これらは正確ではありません。

「感情って何?」と聞くと、「そりゃあ、感じることでしょ!」と答えるでしょう。

けれども、興味深いことに、科学者の間で感情の定義についての一致はありません。

全ての人が感情を持っていることは認識していますが、感情とは何かについての定義は異なっているのです。

それは、チョコレートケーキの味を説明するようなものです。一口食べればわかるけれど、言葉にするのは難しいのです。

脳は私たちの体の管理人です。体の状態を24時間ずっとチェックして、何が必要で何が足りないのかをモニターしています。私たちが経験するのはこれらの情報のまとめであり、それが快適さや不快さ、落ち着きや興奮といった感情を引き起こします。

更に重要なことは、脳は過去の経験をもとに未来を予想します。

「あの時、この状況でこんな感じたから、また同じ感情が出てくるよね」と予測するわけです。だから、感情は脳が生み出すもので、過去の経験は、今感じている感情を作り出すための素材となります。

そして、これが一番大切なポイント。

「過去の経験は変えられないけれど、現在の経験を変えることで、過去の経験に基づく感情の予測や反応が変わる」ということです。

人は、新しい映画を観たり、本を読んだり、新しい趣味を始めることで、新たな経験を積むことができます。

新しい経験を積むことで、脳は新たな予測を立て、未来の行動を変えることができます。その結果、自己の感情をより良く制御し、自分自身を癒すことができます。

全てを完全にコントロールできるわけではありませんが、今ここで何を選ぶか、何を経験するかは、少なくとも自分の手の中にあるということです。