「絶望名人カフカの人生論」

 

 

時間がある時に、この本をパラパラめくっている自分があります。

私もどちらかというと、ポジティブに励ましてくれる言葉よりも気持ちに寄り添ってくれる言葉を好む傾向にあります。

悲しい時は、アゲアゲの曲を聞くよりも、私は悲しい曲を聞ききたい方です。

「はじめに」の中にありますが、ギリシャの哲学者アリストテレスは「そのときの気分と同じ音楽を聴くことが心を癒す」と主張したそうです。

音楽と同様に、言葉でも同じようなことが言えます。

名言と言えば、通常は前向き、建設的でポジティブ、やる気をおこさせる言葉が多いはずです。

しかし、名言を残している偉人たちの中でもカフカは例外中の例外です。彼の発言はすべておそろしくネガティブなのです。

「あまりにも絶望的で、かえって笑えてくる」

筆者はそう言って、カフカのネガティブな言葉をずらりとそろえてくれました。

それが、この本なのです。

例えば、この言葉。

将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。

将来にむかってつまずくこと、これはできます。

いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。

カフカは、絶望名人だった。私たちの中では偉人であり、成功者のはずのカフカが、内情を見るとこんなに絶望に満ちていた。

「自分なんてまだ甘かった」

寄り添ってくれるどころか、はるか上にいく絶望ぶりに、確かに笑えてくるのでした。