変わるのが常

 

モンテーニュの「随想録」も青空文庫にあるのですね。

 

モンテーニュはモラリストの始祖として知られています。哲学者として扱われることはないのですが、その思想は多くの哲学者から引用されています。

断定的でないところにモンテーニュの魅力があって、「自分はこう思うのだけれど、君はどう思う?」と問われているようです。

思索の元ネタとなる、テーマ集ともいえるでしょう。

例えば、次の文(第二巻 第一章 我々の行為の定めなさについて)

 

 

我々の普通のゆき方は、身を機会の風の運ぶのに委せて、右に左に、上に下に、ただただ欲望の赴くところにこれ従うことである。我々が自分の欲する事柄を考えているのは、これを望んでいるその瞬間だけで、あとはまるで置かれた場所によってその身の色を変えるというあの動物のように変る。たった今企画したばかりのことを我々はじきに変える。そうかと思うと、すぐまたもとのことにもどる。要するにそれは動揺と不定にすぎないのである。

 

 

つまり、人はたまたまそこにいる状況次第で変わるものだから、自分自身に対する性格やイメージを固定して考えない方がいいと言っています。

自分探しなんてする必要もない。見えている自分なんて、自分の一面でしかない。そんなのが自分の定義になるはずがないということなんですね。

「わたしには、人間の恒常性を信じることが何よりもむつかしく、かえってその不常性の方が容易に信じられるのである。」ということです。

偶然の出会いがしらでつくられてきた自分。

そういう自分であると思っていると、そんなに依怙地になるほどでもないかなと思います。

自分で自分のイメージを固定しないこと。わかっているようで、わかっていない、大切なことです。