ふと思い出したので。あいかわらず、なんでもない話です。
「げんのう、持ってきて」
幼い頃、日曜大工に勤しんでいる父親に呼びかけられて、戸棚の工具箱から「げんのう」を運んで行った記憶があります。
「ハンマー」ではなくて「げんのう」という響きが、なんとなく「工具」らしさよく表しているなあと思っていました。
「げんのう」の「げん」は、「げんこつ」に語源があるのではないかと思いながら。
けれども、「げんこつ」は「拳固殴ち(げんこうち)」を語源とする言葉で、「げんのう」とは全く無関係なんですね。
「げんのう」という名の由来が「九尾の狐」と関係深いと知ったのは、その頃だったと思います。
げんのうは「玉藻前(たまものまえ)伝説」に由来します。
鳥羽上皇が寵愛した伝説の美女である玉藻前(たまものまえ)は、実は白面金毛九尾の狐の化身であったのを陰陽師に正体を見破られて、数万の軍勢によって殺されました。
しかし、玉藻前は「殺生石」という毒石に変化し、近づく人間や動物の命を奪いました。
そこに訪れた曹洞宗の玄翁(げんのう)和尚が、巨大な槌で石を叩き割って破壊したそうです。
その金槌を、和尚の名前にちなんで「げんのう」と呼ぶようになったそうです。
名前の由来を調べてみると、実は意外に壮大なドラマが隠されていたりします。