面白い論文を教えていただきました。
日本抗加齢医学会雑誌 2014 Vol.10 No.2 83ページ 慶応大学教授 坪田一男先生のコラムです。
心理学者のバーバラ・フレドリクソン博士が発表した論文を紹介していました。
A functional genomic perspective on human well-being.
Fredrickson BL, et al : Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Aug 13;110(33):13684-9.
曰く、「人助けをしてハッピーな人は風邪をひきにくい。」
まず、幸せについて説明します。
幸せは大きく2種類に分類されるそうです。
1つ目は、Hedemic = 個人的快楽的幸せ
おいしいものを食べたり、面白い映画を観たり、楽しいところに遊びに行ったり。
こんな面白いことを経験するなんてオレは何て幸せなんだろうという感じです。
2つ目は、Eudaimonic = 社会的な幸せ
ボランティアや人助けなど、誰かのお役に立つような貢献をした時に感じる幸福感です。
人に親切にした時など、良い気分になりますよね。
実は、この二つの幸せには遺伝子の発現のしかたが違ってくることがわかったそうです。
個人的幸せと社会的幸せで、発現する遺伝子に違いがあるということ自体、にわかには信じられないことですが
面白いのは違いの出た遺伝子の内容です。
個人的幸せの場合は、炎症性のサイトカインがあがっていました。
社会的幸せの場合は、インターフェロンや抗体産生の遺伝子があがっていました。
つまり、一方では炎症を促し、他方では炎症をおさえ抗体産生を促進させていたのです。
これは何を意味するのでしょうか。
社会貢献をし、人助けに精を出す人々は、多くの人と接触することになります。
そのため、ウイルス感染などから身を守るために抗体産生の遺伝子が発現するようになったのではないかという説です。
逆に個人的な幸せを求める人は、個人行動が主となってきます。
事故や怪我を負う確率も高くなってくるため、細菌感染から身を守るために炎症性サイトカインがあがっているのではないかというお話でした。
で、こういうことが言えないでしょうか。
ヒト様のために一生懸命に行動し幸せを感じる人は、自らの免疫をあげて風邪にかかるリスクを減らしている。
それも遺伝子のレベルで!
もし、それが本当ならとても面白いお話だと思いませんか?
風邪をひかないために、手洗い・うがいをしよう!というキャンペーンに加えて
風邪をひかないために、一日一善をしよう!というキャンペーンもありかも知れません。