ω3不飽和脂肪酸が血液透析をしている方によろしいというお話を紹介します。
2月6日の「Kidney International」という腎臓分野の医学専門誌に報告されたものです。
ω3不飽和脂肪酸というのは、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などです。
ご存知の通り、これらが多く含まれている代表的な食品は青魚です。
つまり、イワシ、サバ、ニシン、カツオ、サケなどのおなじみの魚です。
また、クルミやフラックスシード(亜麻の実)などにも含まれています。
Inverse relationship between long-chain n-3 fatty acids and risk of sudden cardiac death in patients starting hemodialysis
Kidney International advance online publication 6 February 2013; doi: 10.1038/ki.2013.4
内容を紹介しますと
血液透析を導入された最初の1年間で、ω3脂肪酸の血中レベルの高い人と低い人を比較したところ
ω3脂肪酸の低い人は、心臓突然死で死亡するリスクが高くなるということが分かりました。
これは、心臓突然死した100人の患者さんについて調べたもので、ω3不飽和脂肪酸の血中レベルは有意に低下していたそうです。
さらにその血中の量が低ければ低いほど、死亡リスクが高まっていたということでした。
これは、魚や魚油サプリメントが比較的安く、容易に手に入りやすいということもあわせてよい参考となるでしょう。
この研究調査のさらなるポイントは、血液透析を導入した最初の1年間の死亡リスクに焦点をあてていることです。
実は血液透析を何年もされている方というのは、すでに尿毒症の時期を脱しているのですが
尿毒症の極期ともいえる血液透析導入前後の時期というのは、やはり身体的にリスクが高まる時期なのです。
血中のω3不飽和脂肪酸のレベルを測定し、高ければ高いほどリスクが減ったということは注目に値すると思います。
ところで、ほとんど同じ時期に、ある意味正反対の調査報告も発表されました。
物議をかもし出している報告ですので、ご紹介します。
これは血液透析に限らない一般を含めたお話で
2月5日に報告された調査報告です。
Use of dietary linoleic acid for secondary prevention of coronary heart disease and death: evaluation of recovered data from the Sydney Diet Heart Study and updated meta-analysis
BMJ 2013; 346 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.e8707 (Published 5 February 2013)
この調査報告の目的は
食事で摂取する飽和脂肪酸をω6不飽和脂肪酸、つまりリノール酸に置き換えることで
冠動脈疾患や死亡リスクの二次予防の有効性を評価しようとするものでした。
具体的にどのようなことをしたかというと
食事で使う通常の動物性脂肪、マーガリンやショートニングを
サンフラワー油(リノール酸)やそれを原料としたマーガリンに変更したそうです。
対象となる方は、最近、冠動脈疾患を起こした男性患者さん458名。
全原因死亡リスク、心血管死亡リスクなどを調査しました。
すると、驚くべき結果が出てしまったのです。
リノール酸に置き換えた群(221人)の方が、何もしなかった群(237人)より死亡リスクが高かったのです。
全原因死亡リスク 17.6% に対して 11.8%。1.62倍高いという結果でした。
同じく心血管疾患死亡リスク 17.2% に対して11.0%。1.70倍です。
冠動脈疾患を起こした方たちが対象ですので、一般の方たち全てにこの結果があてはまるかというと難しいかと思います。
またサンフラワー油だけの話なのかも知れないという異論もあるかも知れません。
最初の報告のω3脂肪酸に関しては不明のままです。
まだ結論を出すには情報が少ないというのが実情ですが
不飽和脂肪酸に関しては
動脈硬化の病態に関わってくるだけに、非常に関心が高まるところです。