上半身は力が抜けていて、お腹や骨盤などの下半身に力が充実している身体の状態を「上虚下実」と言います。
武道やヨガなどの熟練者の姿勢を持ち出すまでもなく、「肩に力がはいってガチガチの状態」というのは、どんな状況でも良くないだろうというのはわかります。
スポーツでも流れるような動きというのは、下半身の土台がしっかりして、上半身が滑らかです。
私が大人になってスケートを初体験した時も、当初は転んでばかりで、やっと少し滑れるようになったのは、今から考えると「上虚下実」のコツを掴んだからだろうと思います。
低次元の私の例を持ち出すでもなく、フィギュア・スケートの映像を観ると上半身の「虚」と下半身の「実」のバランスの良い選手の演技は明らかに美しいですよね。
ところで、肩の力を抜くというのはなんとなくイメージしやすいのですが、「下半身を充実させる」というのはなかなかピンときません。
中村天風氏は「クンバハカ」を説明するのに、講演でこう述べています。
「…さて、“holding the body just the water bottle” 「水を入れた徳利のように」とはどうすることかといえば、何のことはないんですよ。第一に肛門をキュッと締めるんだ。それと同時に肩をできるだけ緩める。そして、臍下丹田、おへその周りのお腹のこと、これにグッと力を込める。その瞬間息を止める。それを息の出し入れにやりゃあいい。吸って止めて出して止めて、吸って止めて出して止める。(中略)お尻の穴を締めてからに、肩を緩めて、丹田に力を入れておきさえすれば、水を入れた徳利のようになっているわけなんだ。」 |
昔から「腹が据わる」と言われているのは、この姿勢のことなんですね。
ちなみに、人間は二足歩行になったばっかりに、腹式呼吸を忘れてしまった動物らしいですね。
四本足の動物たちは、前足を地面につけて肩を固定していますから、必然的に腹式呼吸をしています。
しかし、人間は多少のコツの会得が必要です。練習しても腹式呼吸がなかなかできない人も多いです。
一般的に「深呼吸」の方法について、ラジオ体操第一のイメージが強すぎるのかも知れません。両手を大きく振り上げて胸郭を広げる呼吸の方法が広く浸透しすぎているのも一因でしょう。
ためしに、私たちも四つん這いになって深く呼吸をしようとすると、お腹に意識を集中することになります。さらに深く呼吸をするには、おへその約10cm下、丹田と呼ばれるあたりに力を入れることになります。
呼吸を調整することは、リラックス効果があるだけでなく、ダイエットにも良いらしいですよ。